6.  ハラスメント

重要性が高い項目

6.1  ハラスメントの実態

提言概要

ハラスメントの実態を報告する

学生の意見

ハラスメントの実情を訴える内容

具体的意見

パワハラが強い研究室があるという。調査と対応を求めたい。

・知り合いがセクハラを受けていてかわいそう。

(個人が特定される恐れがあるため自由記述の一部は改変してあります。)

(同様にハラスメントの実態に関する意見が16件)

現状分析

アカデミックハラスメント(アカハラ)、セクシャルハラスメント(セクハラ)、アルコールハラスメント(アルハラ)といったハラスメントは、学生の生活や心身に著しく影響を及ぼす問題です。この問題に対し、東工大においてもハラスメント相談窓口が設置され、学生や研究室への啓発活動が行われています。

6.1-12010年度及び2008年度にアカハラ・セクハラ・アルハラを「現在受けている」「かつてあった」「ない」と答えた学生の人数と割合を示します(2010年度のみ「(上記の中に)該当する選択肢なし」という選択肢を加えています。この選択肢を選んだのは「ハラスメントを受けているかどうかわからない」等の状況の学生だと考えられます)。この図より、3種類のハラスメントのうち、アカハラを経験した学生が最も多いようです。そこで、ここでは、アカハラを例に取り上げて現状分析の結果を報告します。

6.1-2は学年ごとのアカハラ経験者数を示しており、研究室所属を行う学部4年生を境に、アカハラの割合が増えていることを示しています。学部・修士・博士を合わせると、アカハラ経験者は全体の約1割でした。図6.1-3は忙しい時、家に帰れない日の頻度を示しています。この図から、現在アカハラを受けている人だけでなく、過去にアカハラを経験した人も、経験のない人に比べて大学に泊まる割合が高いことがわかります。さらに図6.1-4からは、アカハラを受けたことのある人は受けたことのない人に対し所属する類・学科・専攻に対する満足度が低いことがわかります。

以上から、アカハラは学生の生活状況に深く関連し、心理状況に多大な影響を及ぼしていることが伺えます。学生への心理的影響については、巻末の調査資料集の図3-(14)にも記されていますので、ご参照下さい。

学勢調査2008との比較

前回の学勢調査と比較すると現在受けていると答えた人の割合が減っていることはわかりますが、今回の調査でもようやく全体の約20%の回答が得られたに過ぎず、詳しい議論を行うことはできません。しかし、現在少なくともこれだけの学生がハラスメント被害を訴えているということは事実です。

提言

今回の調査からは、回答者数の少なさ、詳細な設問の少なさから正確な実態を把握することは出来ませんでした。しかし上記のように、ハラスメントによって学生生活への悪影響が見られる以上、何らかの対策を講じる必要があります。今回は統計の都合上、アカデミックハラスメントのみに着目しましたが、セクシャルハラスメント・アルコールハラスメントに対しても共に対策を行うべきです。

図 6.1-1  2008年度と2010年度の各種ハラスメント被害者数の比較

図 6.1-2  学年ごとのアカデミックハラスメント経験の有無

図 6.1-3  アカデミックハラスメントの経験と家に帰れない頻度

 

図 6.1-4  アカデミックハラスメントの経験と所属への満足度

6.2  ハラスメントの防止策

提言概要

ハラスメントの防止策の強化を提言する

学生の意見

ハラスメントの防止策を提案する内容

具体的意見

学生への意見調査、研究室への訪問調査。アンケートを取るだけで終わらせず、もう一歩踏み込んだ対策を行って欲しい。

(ハラスメント実態調査の要望が14件)

・相談センターなどへもっと気軽に行けるような環境が望ましい。

(相談制度の充実・改善・広報を求める意見が14件)

気軽に相談できる窓口の設置(ネット等)

(より簡単な告発システムを作ってほしいという意見が11件)

・教員に対しても倫理教育を行い、議論する機会を設ける。

(教員へのハラスメント防止指導を求める意見が11件)

・研究室に所属する前の段階で、ハラスメントとその対策に関する知識を与えることが有効かと考えます。

(学生へのハラスメントの定義、対策法の説明を求める意見が10件)

ハラスメントの防止策に関しては合わせて173件(うち留学生は15件)もの意見が寄せられました。

アカハラ・セクハラに関しては上記以外にも、事件情報を公開、厳罰化する(それぞれ10件)所属を変えやすくする(9件)などの対策が挙げられました。またアルハラについては、サークルに対するアンケートの実施・罰則の強化・入学時のアルコールテストの実施など、全12件の意見が寄せられました。また、学生間のハラスメントも取り締まってほしい、という意見も5件寄せられました。

現状分析

ハラスメントの対策を求める自由記述の中では、相談制度の改善を求める声が14件と、実態調査の要望と並び最多でした。図6.2-1からは、ハラスメントを受けた際、学内の相談機関よりも友人や家族への相談や、何もしない人の方が多いことがわかります。一方で図6.2-2を見ると、アカハラ経験者は非経験者に比べ、「助言教員・クラス担任」を除く全ての相談機関の利用率が高く、これらの相談機関を必要としていることがわかります。「かつてあった」人は特にカウンセリングとキャリアアドバイザー、就職担当教員の利用率が高いことから、心理的なケアを求めている様子や、将来の進路への不安を抱いている様子が伺えます。また、「現在受けている」人に関しては全体的に「相談してみたい」という回答の割合が比較的高く、悩みを抱え続けている様子が伺えます。

 

質問(学生支援課・保健管理センター)

①全学アンケートやそれ以外のハラスメント調査は可能でしょうか?

②相談窓口の体系はどうなっていますか?また相談窓口のHPやビラ以外の周知は行っていますか?

③先生へのハラスメント講習会などは行っていますか?

 

回答(学生支援課・保健管理センター)

全学アンケートを行うことは、方法や手順などが簡単ではありませんが、可能だと思います。一方、部局内へ立ち入るような調査は、当事者や他の関係者によってそれぞれ見解が異なる場合や、調査によって事態が悪化する恐れがありますので、一概に進めることは難しいのが現状です。

ハラスメントに関する相談内容は、どの相談窓口で相談しても、ハラスメント相談窓口を中心に、相談者の希望に沿ってまとめられます。なので、まずは学生相談室や行きやすい相談窓口にいらして下さい。来年度からは新一年生用にキャンパスガイドブックという冊子を作り、1ページを割いて相談窓口一覧やハラスメントの対策法などを説明する予定です。

教員への講習会は着任時及び年に1回以上行っていますが、必ずしも出席の義務があるわけではありません。今後は年に1~2回各部局で講習会を行うこと、その際一定以上の出席を義務付けることを検討しています。

学勢調査2008との比較

前回の調査結果を受けて、「さよならミスマッチ」のリーフレットやHPによるハラスメントの啓発活動が展開されました。しかし、本調査の自由記述などにはそれらの活動に関してほとんど触れられていませんでした。そのため、現状の啓発活動ではその内容や学生への浸透が十分ではない可能性があります。その理由の一つとして、研究室に送られてきたリーフレットを指導教員が学生に配布しない場合があるほか、今年度はリーフレット自体が配布されていないことが挙げられます。

提言

定期的な実態調査

年1回の全学的実態調査を提案します。ハラスメントに特化した調査により、実情を現調査より詳細かつ広範囲に把握し、大学による適切な対応の基盤とします。具体的には、匿名性・回収率を確保するためにインターネットを介したアンケートを行う、アンケート内に実情を具体的に記述できる自由記述欄を設置するなどです。

相談窓口の広報の強化

相談窓口のより一層の周知を提言します。具体的には、相談窓口一覧のHP掲載、各種関連HPにリンクの設置、学内メールによるURLの定期的周知、および相談窓口案内の掲示板への掲載、学内広報紙での紹介などです。これにより、救済を求める学生への認知を高めます。また非常に繊細な問題であるため、少しでも相談者の心理的ハードルを下げられるよう、相談窓口の地図や写真、各相談員の紹介やメッセージなどのHP掲載を提案します。これらの実現は問題へのより迅速な対応に繋がります。

新告発システムの導入

現在の相談窓口に加え、相談窓口への目安箱の設置、大学のハラスメント関連HPへのメールフォームを設置し、そこからの相談実現を提言します。これらは相談者の心理的ハードルが低く、また当事者の周囲からも相談しやすい利点があります。

学生へのハラスメントの定義・対策法の啓発

学生がハラスメントに適切に対応できるよう、関連知識の啓発活動を提言します。具体的には、リーフレット等の案内が、学生に直接届くように配慮する、HTMLによる見易いハラスメント関連HPの制作と詳細な情報掲載、来年度発行されるキャンパスガイドブックをはじめとした各種案内の留学生版(英語)の作成、年一回の研究室所属学生対象の講習会の実施などです。また、講習会での相談員紹介により、上記同様、心理的ハードルの低下が期待できます。これらは学生にハラスメントの定義・対策法等を認識させ、ハラスメントへの適切な対応を促します。

図 6.2-1  ハラスメントを受けた時の対応

 

図 6.2-2  アカデミックハラスメント経験の有無と主な相談窓口利用者数


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2010 Tokyo Institute of Technology