5.  学習関連

 

本項目では、本学での学習について寄せられた意見と関連する定量的データ等から、以下の8つの細目に分けて提言を述べていきます。

 

5.1. 大学の指針                             …… 大学や学生の目指すべき方針について

5.2. 国際的教育                             …… 大学の国際化について

5.3. 研究および研究室に関して  …… 研究生活や研究教育について

5.4. 授業の実態                             …… 授業の実態について

5.5. 大学制度                                …… 大学の教育制度について

5.6. カリキュラム                         …… 時間割・授業内容に関する要望

5.7. 単位・成績                             …… 成績評価の標準化

5.8. その他                                    …… 上記以外の意見の抜粋

 

 

 なお、本学は「しっかりとした基礎学力を身に付け、人々から信頼される創造性豊かな理工系人材を育成します」という教育ポリシーを掲げています。詳細については、下記のURLhttp://www.titech.ac.jp/about/activity/policy.html)もしくは各学科・研究科等のホームページをご参照下さい。

 

提言概要

 

 今回の学習に関する提言の中で最も重要性が高いのは「大学の指針」です。また、「学生の主体性・目標意識の向上」、および「国際的教育」も重要性の高い提言と位置付けます。続いて、本項目の内容を簡潔にまとめると、授業の質の担保と学習環境の改善、教育・研究についての更なる情報公開を提言しています。学生側が授業内容を把握した上で自主的に学習に励み、大学側が学習環境を積極的にサポートする事が、上記の教育ポリシーを体現するような人材の教育に欠かせないのではと進言します。


 

重要性が高い項目

 

5.1  大学の指針

5.1.1  大学の指針についての話し合い

提言概要

大学や学生の目指すべき方針について、両者の話し合いの場を設けることを提言します。

 

学生の意見

今回の調査では本学での学習に関して、様々な意見が提出されました。具体的な意見は、後述する各種意見にて述べますが、それらの意見は多種多様であり、一概に東工大生全体の意見としてまとめることは出来ません。

 

現状分析

学勢調査にて様々な意見が寄せられましたが、学生の考えは多種多様であり、総意となりうるような一貫した意見としてまとめることは出来ませんでした。また、意見の中には抽象的で具体性に欠けており、その記述からのみでは学生の真意を読み取れないものも多くありました。これは、アンケート形式で意見募集を行う学勢調査の限界と考えられます。

そのため、各意見の賛同者の全学生に対する割合等は本調査では把握できません。ですが、学生の意見として挙げられている意見の主な傾向、種類に関してはある程度把握できましたので、これらに関しては項目別提言にて扱います。

 

学勢調査2008との比較

2010年度の調査で新しく取り上げた項目です。

 

具体的提言

今回寄せられた意見を参考に、大学の学習に対して、学生、教員、大学と意見交換をする場の設置を提言します。

項目別提言

 

5.1.2  学生の学習に取り組む姿勢・意識、および視野の広さ・多様性の受容の向上



提言概要

学生の主体性や問題意識の向上を目的としたカリキュラムや授業形態の充実が、学生の学習への姿勢・意識、および視野の広さ・多様性への受容の向上に有効になるのではないかと考えました。

学生の意見

学生の主体性がない、視野が狭いなどの問題や、その改善を求める意見が提出されました。

具体的意見

<学生に対して改善を求める主な意見>

・学生の勉強に対する意識が低すぎる。
(学生の学業に対する意識・姿勢に関わる意見が14件あります)

・世界観の狭い学生が目立つ
(視野の狭さや多様性の受容に関わる意見が11件あります)

 

<学生の主体性の改善を求める意見>

・一言でまとめると根本的な原因は、学生が「自らの責任で」主体的に社会で生きてゆく能力の無さだと考えます。(同様の意見が8件あります)

 

<主体性を向上させる授業形態やカリキュラムを求める意見>

・知識トランスファー型の受身主体から、議論を中心とした能動的な講義とする(同様の意見が23件あります)

現状分析

「学生に対して改善を求める意見」として寄せられた自由記述の意見のうち、「学生の学習への姿勢・意識」「視野の狭さや多様性の受容」について改善を求める意見が、多くを占めていました。そこで、今回はこの2点が、「学生に対して改善を求める意見」の中で主なものと、学生スタッフの中で考えました。以下では、「学生の学習への姿勢・意識」を高める方法を分析します。

 

5.1.2-2に示した通り、「目標意識」が高い学生は、「勉強・研究時間」が長いことが伺えます。このことから、「学生の学習への姿勢・意識」を高めるためには、学生が「目標意識を持つ」ような教育体制が有効ではないかと考えました。

ここで、関連する定量データはありませんが、「主体性が高い」学生であるならば、問題に自ら取り組むため、「目標意識が高い」と考えられます。学生の「主体性を高める」教育体制により、「学生の学習に取り組む姿勢・意識」を自ずと向上させることが出来る可能性があります。

 

その他にも多岐にわたって、学生の能力・技術に対して向上を求める意見が寄せられました。それらの問題に関しても、学生が「主体性」「目標意識」を持つことが、向上につながる一因ではないかと考えました。例として、後述する「学生の国際コミュニケーション力・語学力の向上」を挙げます。学生が「主体性」「目標意識」を持っているのであれば、今後の進路や必要な能力を自ら考え、「語学力」が必要だと認識すれば、その能力の向上に自ら励み、問題の自発的な解決に繋がるのではないかと考えられます。

また、「学生の主体性の向上」「主体性を必要とする授業形態・カリキュラム」を求める意見も、自由記述において一定数以上寄せられました。

現在本学では、学生による能動的・発見的な学習への取り組みを念頭に置く、「創造性育成科目」という授業が複数開講されています。これらは「主体性を必要とする授業形態・カリキュラム」の一例と考えられます。

学勢調査2008との比較

なし

具体的提言

以上を踏まえ、「主体性・目標意識」を向上させる学習カリキュラムや授業形態を整え、また「視野の広さや多様性の受容」を高めるような学習カリキュラムや授業体制を整えていくことが、今後学生の「学習に取り組む姿勢・意識」および「視野の広さ・多様性への受容」の向上に有効になるのではないかと考えました。そこで、「主体性」「視野の広さや多様性の受容」を高める教育の具体例について述べていきます。

これら2点を向上させるためには、ディスカッション、グループワーク、プレゼンテーションといった、学生が能動的に取り組む要素を含んだ、授業カリキュラムや授業形態が有効ではないかと考えています。

 

そのような要素を含んだ教育体制は、学生自ら考える機会が含まれているため、学生の主体性が向上するのではないかと考えました。

また、これらの教育体制は学生が共同で作業する機会も含んでいます。共同活動を成功させるためには、他者との積極的な意見交換や意思疎通が重要と考えられます。そのため、これらは「視野の広さや多様性の受容」を向上させる機会になり得るのではないかと考えています。

この様な学習体制は、同様の内容が自由記述の回答として学生からも提案されています。また、先述の「創造性育成科目」ではそういった形式が取り入れられていますが、一般の講義内においても、部分的(カリキュラムの途中や講義の最後など)にこのような形式を漸次取り入れることも、学生の主体性・目標意識を向上させるために有効ではないかと考えられます。

 

本項目は調査データをもとに学生スタッフが解釈したものです。提案された授業形態などは学生 側の一つの意見として捉えていただき、本学のより良い教育のために、今後さらなる調査と検討が必要であることを添書きいたします。

図 5.1.2-1  「学習への姿勢・意識」「視野の広さ・多様性の受容」の向上

図 5.1.2-2  本学での目標意識と勉強・研究時間との相関

5.1.3  学部生の目標意識向上のための授業の工夫



提言概要

学部生の目標意識向上のための授業の工夫

学生の意見

学生の学習意欲向上を向上するためには、「学科・研究の説明の充実」「授業の有用性の説明」「早期の研究室所属」が有効ではないかという意見が提出されました。

具体的意見

・各学科の魅力をもっと伝えて目標をもたせる

学科・研究の説明の充実に関わる意見が10件程度あります)

・基礎の大切さと、実際研究室には行った際にどれぐらい必要か危機感をあおる。

授業の有用性を説明に関わる意見が5件程度あります)

・研究室所属を早める(卒業研究は4年からでもいいかもしれない)。それによって蓄えた知識の具体的な活用を実感できるから。英語の大切さにも早く気付く。それに伴い進路の方針の決定は早まるので、2年までに将来の進路を考える機会があるようにする。

早期の研究室所属に関わる意見が5件程度あります)

現状分析

5.1.3-1は本学における目標を持った学部生の割合を示したものです。学部1年次から学部2・3年次にかけて、目標を持つ学生の比率の低下が示されています。

5.1.3-1は、学部1年次の学生の意欲向上に有効と考えられる講義の結果です。「研究室体験できるような授業を増やす」「学部1年次において専門科目を増やす」が比較的多く選ばれました。これらの措置は、早期に自分の進む分野の具体像が見え、目標意識が明確になるため、意欲向上につながるのかもしれません。またこういった意見の傾向は、自由記述からも一定程度読み取ることが出来ました。

また、研究室所属の早期化をすることで、勉強の必要性や危機意識が高まるといった意見も寄せられました。この試み自体は研究室側の負担も大きいため実現は難しいですが、勉強の必要性や危機意識を高める方法として参考にすべきところはあるかもしれません。

学勢調査2008との比較

なし

具体的提言

学部生の目標意識を向上させるカリキュラムとして、「学科・研究内容の説明の充実」「授業の有用性の説明」「研究室体験できるような授業の充実」など、授業の意義を明確にすることや、将来を俯瞰できる内容を授業に盛り込むことなどが有効であると考えられます。具体的な内容に関しては規模の大きい提言にもあるように、学生の意見調査や学生との意見交流を経て決めるべきだと考えられます。

 

図 5.1.3-1  学年別の本学での目標の違い

 

図 5.1.3-2  学部1年次の意欲向上に有効なもの


 

5.2  国際的教育

5.2.1  学生の語学力

提言概要

本学に在籍する留学生との交流の活発化

学生の意見

本学における学生の国際コミュニケーション力の強化に対する意見が提出されました。

具体的意見

Intense graduate students (Master and Doctor) English communication skills.

・我々はプレゼンや英語が他国と比較して非常に低能。

日本人学生の国際コミュニケーション力向上を望む意見:21件)

 

TOEICは単なるビジネス英語のテストであって、これで高得点をとっても English language proficiency として英米で使われることはまずない。聴解力とリーディングのみしか試験しないので、受験者の英語力を十分に反映しないからだ。東工大はTOEICを速やかに廃止して、TOEFLもしくはIELTSに移行すべき。

(本学での語学力評価の方法の移行を提案する意見)

 

If possible, organise intensice Japanese language courses for foregin students

Should have more categories of classes available, beside the main studies involving the major. For examples, art classes, literature classes, and more advanced Japanese classses (e.g. JLPT, Japanese literature, etc.).

(集中講座など、日本語講座の充実を求める意見)

 

・有料でもよいので,学内で英会話教室を開いてほしい.学内ならば,授業や研究の合間に受けられる。

・留学生や英語ネイティブスピーカーと交流できる場所や企画があるといいなと思います。

I would to see more courses offered in different fields and have more visiting lectures from different backgrounds and countries.

(留学生と日本人学生との語学教室、国際交流の機会を望む意見)

現状分析

日本人学生の国際コミュニケーション力の向上を望む意見が、一定数以上寄せられています。これらの意見は、日本人学生との意思疎通に困難を覚えた留学生から寄せられたり、国際学会でのプレゼンテーションや議論の場を経験した学生から寄せられたりしているようです。関連して、TOEICによる現行の英語力評価を、ライティングやスピーキングを含めた試験へ移行させる提案も寄せられています。なお、現在、高度なライティングやスピーキングの語学科目は開講されていますが、選択科目の1つという位置づけになっています。

また、本学は年々留学生が増加しており、スキルアップのために日本語の授業の充実を望む声が一定数以上寄せられています。

その他、学生の語学力の向上や国際交流のために、留学生と日本人学生との交流の機会を望む意見も一定数以上寄せられています。これらに関してはサービス関係の提言に詳しく述べられていますが、大学では語学教育や国際協力のサポート体制は整っており、それらの活用は学生の自主性に任せるとしています。

学勢調査2008との比較

2008年度の調査においても語学教育の強化が挙げられています。

具体的提言

○国際コミュニケーション力の向上

英語のリーディング、リスニングだけでなく、今後はライティング、スピーキング能力の向上が必要となるかもしれません。具体的な方法としては以下のようなものが考えられます。

・必修語学講義へのライティング、スピーキング要素の導入

・学部早期からの留学生チューターなど、国際コミュニケーションの場を経験する学生数の拡大

・語学力評価試験のTOEFL, IELTS等への移行

 

 なお、これら国際コミュニケーション力の向上のための手段は、今後詳細な調査と検討をする必要性があると考えられます。

 

○留学生との語学・国際交流機会の支援

 現在も大学による支援体制は整っています。それに加えて、留学生と日本人学生でお互いの言語を教え合う、タンデム、Language partnerを、学生の目に付きやすい生協にて掲示板で募集するなど、更に学生が利用しやすいサービスの整備が有効かと考えられます。

また、すずかけ台キャンパスではオーラルコミュニケーションの講義を求める意見が上がっています。すずかけ台キャンパスでは留学生率が高いため、その環境を活かせるタンデムなどの手段は講義の代替手段として有効に機能する可能性があります。


 

5.2.2  教員の英語力強化

提言概要

教員の英語力の強化

学生の意見

本学における教員の国際コミュニケーション力の強化に対する意見が提出されました。

具体的意見

Urge all professors to learn more and more English.(同様の意見が5件あります)

現状分析

国際的教育についての自由記述において、22件中7件が留学生からの記述であり、7件中5件が教員に英語教育を施すべき、英語力を向上させるべきとの内容でした。この事から、教員の英語力に対して、不満をもつ留学生がいることがうかがえます。教員が英語力に欠けることは、少なからず留学生に対する教育・指導にも支障が生じる恐れがあります。また国際化が進む中で、大学の競争力を維持のためにも好ましくはないと考えられます。

学勢調査2008との比較

なし

具体的提言

教員にも英語の公開試験の結果を提出する義務を課し、英語力が不足していた教員に対する研修を行うことで、教員の英語力への関心を高めることが今後重要になってくるのではないでしょうか。

 

5.2.3  すずかけ台キャンパスにおける語学授業の充実

提言概要

すずかけ台キャンパスの学生に配慮して授業形態とカリキュラムの再考

学生の意見

すずかけ台キャンパスの学生が英語教育などを筆頭に各種授業で、大岡山の学生に比べ不利な点が多いという意見が提出されました。

具体的意見

・すずかけ台では英語のオーラルコミュニケーションの授業が開講されません。大岡山で受けたくても研究室での研究を考えると時間がかかりすぎて大岡山まで行けません。これからの時代、英語学習は必須です。どうかすずかけ台でのオーラルコミュニケーション授業を開講して下さい。(同様の意見が19件あります)

現状分析

教務課とのインタビューにおいて、問題点を共有できました。教務課より外国語研究教育センターに検討を打診する予定です。

学勢調査2008との比較

なし

具体的提言

すずかけ台キャンパスの学生に配慮したカリキュラムの再考を提言します。具体的には以下のようなものが考えられます。

<必修科目の具体例>

生命理工の学部生が必修の英語授業やTOEIC対策の講義。

<選択科目・大学院の授業>

英語授業の拡充と存在の告知(大学院に関しては、すずかけ台でも受講できる英語科目がある)

 


 

5.3  研究および研究室に関して

5.3.1  学生への研究支援

提言概要

研究環境に対する相互理解を深める事を目的とした情報公開

学生の意見

研究支援を充実させて欲しい

具体的内容

・施設、設備に投資する前に研究に投資してほしい。(同様な意見が9)

・実験器具・設備等にもっとお金をかけて頂きたい。(同様な意見が4)

・授業料免除の見直し、予算決算の公開、学生と運営側との意見交換

雇用や実験スペースへの要望を含め、合計18件の意見が寄せられました。

現状分析

本学の財務諸表を調べたところ、平成21年度は前年度より研究経費が約10億円増額しました( 5.3.1–1, 2)。にも関わらず、研究支援の要望が多い事を踏まえ、次に示す仮説を立てて研究推進部へお話を伺いました。

・研究予算に関する学生側の認識と実情にギャップがある。

・1人あたりが恩恵を受ける額が少なく、予算が増えた実感がない。

 

質問学生が予算の事を詳しく分からずに研究費の増額を要望する事についてどうお考えですか?

質問大学から各研究室に支給される研究費は、研究経費から捻出されているのですか?

研究経費の増額により学生が受けた恩恵を具体的に教えて下さい。

 

回答学生が大学経営に興味をもつ事は非常に良いと思います。財務レポートもご覧下さい。

回答研究経費以外からも捻出されています。各研究室に割り当てる予算は大学側の一括管理ではなく、各部局(局・部・課などの総称)が管理しています。

学費免除の拡大や教務Webシステムの導入、博士への支援等が実現しました。学生1人当たりの教育経費は、他大学より非常に高い水準ですまた、研究経費は増額しましたが政府からの補助金等は減額され、一概に研究費が増えたとは言えません。今後は研究助成に関する周知に一層力を入れる方針です。

学勢調査2008との比較

2008年度の提言書の4.1.2.3「研究および研究室に関して」という項目に同様な要望が記されていました。その報告内容を具体的に検証するために、本年度は更に踏み込んだ調査活動を行いました。

提言

上記のインタビュー結果から、いくつかの研究費に関する認識の違いが解消され、研究環境に対する相互理解の重要性も想起されました。研究環境に対する相互理解を深めるためにも、大学運営に支障のない範囲内で今後も予算や研究支援に関する情報公開をしていただきたいです

また、インタビューの最後に、学生に向けて「世界に比する工業大学である本学を好きになっていただきたいです。過去の偉大な成果や現状を知る事でモチベーションを上げ、それをものづくりの力に活かして下さい」というコメントもいただきました。

 

表 5.3.1-1  平成20年度財務諸表

 [出典 http://www.titech.ac.jp/about/outline/pdf_financial/fs_20.pdfから抜粋]

 

 

表 5.3.1-2  平成21年度財務諸表

[出典 http://www.titech.ac.jp/about/outline/pdf_financial/fs_21.pdfから抜粋]


 

5.3.2  研究室の拘束時間について

学生の意見

研究室の拘束時間が長過ぎる

具体的内容

・研究室に拘束される時間が長過ぎます。

・学内全体で、研究室の実験で徹夜が横行していることが心苦しい。

・担当教員は「コアタイムはとくに無い」と言っていたのに、実際入ってみると「朝9時から夜の9時までがコアタイムだ」と言っていた。

(上記のものも含め、同様な意見が5件あります)

現状分析

5.3.2-1より、大半の大学院生が研究や勉学に長時間励んでいる事が分かります。しかし上記の通り、望んでいないのに研究室に長時間滞在せざるを得ない学生もいます。また、今年度からすずかけ台キャンパスでは、休日・深夜・早朝の実験に申請が必要になりました。この施策の意図の確認も兼ねて、施設安全企画課にお話を伺いました。

 

質問 すずかけ台キャンパスで夜間作業の申請が必要になった経緯を教えて下さい。

 

回答 以前起きた事故が発端となり制定されました。制度目的は夜間作業時の責任の所在や連絡体制等の明確化であり、研究室の拘束時間を規制する制度ではありません。しかし、1日の研究実験時間は10時間までが望ましく、指導教官裁量で学生の管理を履行する事が下記URLに明記されています。

http://www.gsmc.titech.ac.jp/hyoushi/choukikeisaijyouhou/

160730/040730kinmujikan.htm

 

以上により、研究活動の実態に対する大学側の見解が把握できました。学生が主張する研究室の拘束時間の長さが及ぼす悪影響は、現行の学勢調査のデータからは明言できません。追加調査の必要性の有無も含め、アンケート項目の改定が必要です。

学勢調査2008との比較

なし

 

 

図 5.3.2-1  課程別の一日の勉強・研究時間


 

5.3.3  大学院における研究と教育の両立について

提言概要

教育と研究の両立を図る施策の実現

学生の意見

授業が多過ぎて研究に時間が掛けられない

具体的内容

・大学院の講義時間が多すぎて、研究に時間が掛けられない。

・興味のない講義によって研究の時間が削られてしまう場合も多々ある。

「研究が忙しく、講義に時間をかけられない」という逆の主張などを含め、合計13件の意見が寄せられました。

現状分析

 大学院生が授業に出ない理由は「研究・実験のため」が最多でした( 5.3.3-1)。一方、授業が多くて研究に支障が出るという逆の意見も9件あります。どちらのデータからも伺える事は研究と授業の両立が難しくなっている」点です。この点について教務課の見解を伺いました。

質問修士以上の学生が授業に出ない理由として最も多く出た回答が「研究・実験のため」である事をどう思われますか?

質問研究と教育の両立の為にどのような取り組みが必要でしょうか

回答本学が研究大学である以上、研究を重視したい願望は当然だと思われますが、大学側には教育の質を保証する責務があります。30単位以上の取得は大学院設置基準に定められており、この条件を満たす事が、学位取得の為に研究を行う上での大前提となります。

回答教育と研究の両立が難しいという意見も考慮し、修士課程の修了要件や博士課程の全般的な見直しを進めています。また、社会が学生に求めるのは研究成果だけではなく、研究室外の経験・知識も不可欠です。その一環として授業にも懸命に取り組んで下さい。

以上により、30単位の取得という修了要件が変えられない実情と、教育と研究の両立を図る為の試みが始まっている事が分かりました。

学勢調査2008との比較

前回調査での該当項目(4.1.2.1 大学院における授業の意義と実施に関して)は学生の主張を主体的に扱った内容であったため、本年度は大学側の見解を把握するためにインタビューを実施しました。

提言

教育と研究の両立を図る施策の更なる検討・詳細調査が有効ではないでしょうか。一例として、実験で忙しい学生も参加しやすい時期・時間帯での授業の開講、研究への応用例・キャリア設計に役立つ事例等を取り上げる事を進言します。後者については、カリキュラムが実用的であれば学生は時間を遣り繰りして進んで授業に参加し、研究と教育にwin-winの関係が再構築できる事を期待します。

図 5.3.3-1  課程別の授業に出席しない理由


5.3.4  研究室同士の交流

提言概要

公開セミナーの広報の強化

学生の意見

専攻間・研究室間の交流

具体的意見

・専攻を超えた交流ができる機会を作ってもらえるとうれしい。

他の研究室交流の企画をもっと大学主体で数を増やしてほしい。

・他学科や他専攻、他研究室がどんなことをやっているのか、

知る機会が少なくてもったいないと思います。

(同様に専攻間・研究室間の交流を求める意見が5件)

現状分析

学生の中で、専攻外・研究室外の方々との交流の需要があることが明らかになりました。専攻内の交流については、専攻の研究室を一つの建物にまとめると良いなどの意見が寄せられました。しかし各専攻によって考え方や方針が異なるため、大学全体で一括した変更を行うのは困難なようです。学生主体の研究室間セミナーなどの開催が現状でできる解決策ではないでしょうか。

一方、専攻外の研究室の交流は大学側によるサポートが有効です。交流の促進には、研究室の公開セミナーの活用が考えられます。しかし、東工大HPでは他のイベントと併記され見つけにくく、このような機会はあまり認知されていないようです。特に、卒業論文・修士論文・博士論文発表会は研究室外へ向けた密度の高い発表会です。これらの公開発表会を周知し参加者を増やすことで、学生に新たな視点が加わることを期待します。情報の伝達法のうち、学部生には各種掲示板、修士・博士にはメールが効果的と考えられます(図5.3.4-1)。

学勢調査2008との比較

なし

具体的提言

東工大在学生向けHPトップに公開セミナーの情報をまとめた「オープンセミナー」の項目を新しく作ること、また項目を作った際はメール及び学科・専攻の掲示板で学生に通知することを提言します。さらに電子掲示板でも公開セミナーの情報を流すことを提言します。

 

図 5.3.4-1  課程ごとの学校情報の情報源


5.4  授業の実態

5.4.1  授業評価アンケート

提言概要

授業評価アンケートについての現状報告

学生の意見

授業評価アンケートに対する意見

具体的意見

・選択式のアンケートは匿名性が高い一方、実際の問題点が浮かび上がらない。そのため、好きな事を書く欄が必要であると思う。また、採点結果が明らかになったのちのアンケートも必要であると思う。そうでなければ不当な採点をされたりハラスメントを受ける要因になりかねない。

・授業評価の公表。

・学期の終わりに書く評価シートはどのように活用されているのだろうか。

(以上3件)

現状報告

 授業評価アンケートについて以上のような意見が見受けられました。

 一つ目はアンケートの形式に関する意見です。今のところ1件しか自由記述がなく学生全体の意見が分からないので他にも授業評価アンケートについて不満や意見がないか調査する必要があります。

 二つ目については困難かもしれませんが、各授業の評価結果の公開を求める声が一定数見られました。

 三つ目の記述について、授業調査の結果は以下のURLで公開されていますが、この自由記述を見ると、このことについて十分周知がなされていないと考えられます。

 http://www.cradle.titech.ac.jp/hyoka/index.html

 授業評価アンケートがどのような目的で行われ授業の改善にどのような形で役立っているのか大きくアナウンスする事も重要だと言えます。

学勢調査2008との比較

学勢調査2008において授業評価アンケートに関する直接の記述はありませんが、「教員の指導力、やる気、授業の質に対する批判的意見」の参考として授業評価アンケートについてのURLが記載されています。

 


5.4.2  教員に対する意見の現状報告

提言概要

教員に対する意見の現状報告

学生の意見

教員に対しての不満

具体的意見

・基本的に説明力にかける教員が多いです。

・先生方の教育に対するモチベーションは高いものの、その分野を学ぶことに対する魅力やメリット、社会へどのように貢献しているのか、といった説明が足りないと思います。 (中略) 単に知識を教えるのではなく使い方と魅力を大々的に宣伝すべきだと考えます。

・生徒の勉強に対する意識が低すぎる。しかしその原因は教授にあると思う。教科書に書いてあること以外を教えるのが授業だと思う。

12件)

現状分析

「教員の学生への対応は適切ですか。」というアンケート項目の回答をグラフ化して見ると五段階中、適切ではない側の「1」「2」を選んだ人の合計は11%で、「5」の27%、「4」の36%と比べかなり小さくなっています。多くの生徒は教員の対応に関して満足していると考えられます。

この項目の「教員」というのは、「指導教員」に限定せず、「教員全般の指導・授業・事務手続きの対応」という意図で質問しています。そのため参考程度の結果となりますが、教員の対応と研究室への満足度のクロス集計の結果を見ると、研究室への満足度が低いほど教員への不満も大きく、教員の対応が研究室への不満の一端を担っている可能性があります。

 また、教員の指導力不足や、研究力(研究意欲)が低い「素質」がないなど教員が不適切だとする記述が12件見られました。特に指導力不足を指摘する記述は6件見られました。ただ、この件に関しては意見をした学生の主観の問題も大きく、一概には言えませんが、今後、教員の指導力に関する詳細な調査の必要性も出てくるかもしれません。

学勢調査2008との比較

 学勢調査2008には「教員の指導力、やる気、授業の質に対する批判的意見」として24件の記述がある事を報告しています。単純に比較する事は出来ませんが、今回の調査では教員への不満を訴える記述は半減したと言えます。しかし、依然として不満の意見があがっている事に変わりはありません。

 


 

 

図 5.4.2-1  「教員の学生への対応は適切ですか」に対する回答

 

 

図 5.4.2-2  類・研究科、専攻などへの満足×教員の学生への対応

 


 

5.4.3  授業の出席状況・出席点についての現状報告

学生の意見

出席点制度や授業に出席を課す事への不満

具体的内容

・出席点制度をやめるべき。点数に実力が反映されない。

・履修人数が確保できないといった理由で世話人の先生の研究室の学生が出席しなければならないような集中講義なら、行わない方がいいと思う。

出席点を減らすべき・無くすべきという意見が4件、出席を課されて困るという意見が4件で、合計8件の意見が寄せられました。

現状分析

出席点制度に不満がある一方で、出席点がないと授業に出ない学生が一定数存在するも判明しました( 5.4.3-1)。この事から、出席点は学生が授業に出ない事を抑止する働きがあると考えられます。また、2008年から2010年にかけて「授業に殆ど出席する」学生の割合が増加しました( 5.4.3-2)。このデータは解釈が難しいため、真面目な学生の増加 出席を課す授業の増加 という仮説を立てて教務課にお話を伺いました。

 

質問真面目な学生が増えた印象はありますか?具体的には、留年する学生の減少、授業の平均点の上昇といったデータはありますか?

質問② 2008年から2010年にかけて出席点制度のある授業は増えましたか?文部科学省や大学側から、出席点を重視すべきという意見は出ていますか?

 

回答「留年する学生の減少・授業の平均点の上昇」のデータはありますが、分析まで至っておりませんので、真面目な学生が増えたか否かは分かりかねます

回答 データは、把握していません。出席の評価は、各教員の判断によって決定されています。大学及び文部科学省はそのような意向を表明していません。しかし、大学設置基準により単位の認定に必要な学習時間が制定されており、この点からも授業に出る事はいわば必然といえます。

 

以上により、授業の実態に対する大学側の見解を把握できましたが、授業の出席状況が変化した原因を客観的指標で知る事はできませんでした。

学勢調査2008との比較

2010年度の調査で新しく取り上げた項目です。2008年度の定量データとの比較からは、出席点がないと授業に出ない学生が一定数存在する事と、「授業に殆ど出席する」学生の増加が判明しました。

 


 

図 5.4.3-1  授業に出席しない理由の推移(複数選択可)

 

 

図 5.4.3-2  授業の出席状況の推移


 

5.4.4  社会人学生への配慮

提言概要

社会人学生への配慮の拡充

学生の意見

社会人学生への配慮

具体的内容

・履修しやすい時間帯の講義を増やしてもらいたい。

・技術経営専攻の授業の時間帯をもっと社会人に配慮してほしい。

(授業が履修しづらいという意見が9件)

・時間のない社会人の立場にたって手続きの簡素化、ガイダンスの一本化を考えて頂きたい。(事務手続きへの要望が3件)

母数が少ないにも関わらず、施設・卒業要件等への要望も含め18の意見が社会人学生から寄せられました。

現状分析

以上により、「仕事との両立を図るのが困難で、授業の履修や事務手続きに支障が出ている」といった、社会人学生の学習環境の厳しさが想起されます。内訳は、イノベーションマネジメント研究科への意見が13を占めました。そこで、同研究科の自己点検・評価結果を拝見すると「土曜日だけで主要科目が受講できるローリング制の導入」等の改善事例の報告があります。以上を踏まえ、教務課にお話を伺いました。

 

質問改善事例があるにも関わらず、イノベーションマネジメント研究科の社会人学生から不満の声が多い原因をどうお考えですか?

質問イノベーションマネジメント研究科以外では、他大学の夜間過程のような社会人学生向けの教育プログラムはありますか?

また、社会人学生の要望を聞く機会はありますか?

 

回答時間割への不満を解消するには、教職員の勤務体制を整える必要があります。そのためには全学的に同意を得る必要があり、現状では要望にはお応えできていません。

回答11-12限(18:30-20:00)の授業は、イノベーションマネジメント研究科でのみ実施されています。現在その他の研究科では、社会人に十分配慮した教育プログラムはありません。

教務課の把握している限りでは、そのような機会はありません。イノベーションマネジメント研究科(社会人ドクターに関しては教育推進室)に検討をお願いする事は可能です。

学勢調査2008との比較

2008年度の提言書の「4.1.2.2大学院教育の諸制度について」という項目に同様な要望が記載されていました。その報告内容を具体的に検証するために、本年度は更に踏み込んだ調査活動を行いました。

提言

上記の分析内容・インタビュー内容を踏まえ、社会人学生が学習しやすい環境作りを引き続き進めていく事を提言します。まずは意見交換の機会を定期的に設ける事で、社会人学生のニーズとその実現可能性を正確に確認する事が重要です。最後に、現状分析の欄に引用した「イノベーションマネジメント研究科の自己点検・評価結果」のURLを記載します。

http://www.mot.titech.ac.jp/data/keikaku_jikotenken_h19.pdf

 


 

5.5  大学制度

5.5.1  他大との交流の活発化について

提言概要

他大との交流の活発化

学生の意見

他大との交流制度の充実

具体的意見

・四大学連合や単位交換制度などをさらに充実させ、他の大学との交流をますます深めていくべきだと思う。

・四大学連合における授業の選択肢を増やしてほしい。

(以上2件)

現状分析

現在、四大学連合や他大学との単位互換などで他大の授業を受けることができます。しかし、授業の選択肢について上のような不満の声が上がってきています。これについて教務課に以下のような質問を行いました。

 

質問

 四大学連合での授業の選択肢を増やすことはできますか。できないとしたらどのような理由がありますか。

 

回答

・文理総合コースでは履修生からの要求に基づき一橋大学に授業科目を増やすように要請していますが、要求科目数が多いため、一橋大学側の事情もあり実現していません。

・どのような授業科目を新たに増やしたいか履修生の側から積極的に各コース主査の先生に申し出てほしいです。

・工学部の学生に限りますが、経済学関係では慶應義塾大学で少人数のゼミを除くほとんどの科目を履修できますので、慶應義塾大学での履修をお勧めします。

学勢調査2008との比較

なし

提言

四大学連合などの他大の授業を受講できるシステムにおいて、履修できる授業を増やす事を提言します。他大学との交流をさらに活発化させるためにも履修できる授業の選択肢を増やしていただきたいです。

また、学生側もどのような授業科目を新しく開講してほしいのか積極的に申し出るべきです。

 


 

5.6  カリキュラム

5.6.1  時間割・授業内容に関して

提言概要

積極的な学生の意見発信

学生の意見

 自由記述よりカリキュラムの改善を求める要望が19件存在します。

具体的内容

・時間割の自由度を少し増やしてほしい。(同様の意見が4件あります)

・カリキュラムを変更・見直しをした方がよい。(同様の意見が10件あります)

・授業ごとにすずかけ台-大岡山間を移動するのは負担である。(同様の意見が5件あります)

現状分析

教務課に以下のようなお話がうかがえました。

質問① 時間割および講義室の決定方法はどうなっているのでしょうか。

時間割の作成においてまず前年時間割を参考に全学科目が各曜日・時限に割り振られます。続いて、学科・専攻において専門科目の開講を決定します。それを受け、教務課は各学科・専攻に開講曜日・時限・希望講義室を調査します。この時点で曜日・時限が固定となります。そして、調査結果を元に講義室を調整します。

また、同じ授業を複数回行う事で、自由な授業選択ができないかという事については、現在講義室の数・教員の都合などの関係で難しいようです。

 

質問② 時間割決定の際に学生意見を反映することは可能でしょうか。

時間割作成にあたって、全ての学生の意見を反映する事は現状では難しい状況です。ただし、学生になるべく負担を強いる事がないように最大限配慮して時間割作成に臨んでいます。

 学生の意見という点では、昨年教務Webシステム並びに講義室についてアンケートを実施しました。参考になる意見も寄せられましたが、回答率が10%以下と低かったのが現状です。学生は是非このような機会を生かしてほしいです。

 

 また、本学ではTitanet3を利用した動画送信システムにより、大岡山とすずかけ間でリアルタイムに同時に講義を行うことが可能です。このシステムは現在一部の講義で使われていますが、使用の有無は担当教員に一任されているということです。

学勢調査2008との比較

 前回調査においても同様の要望(キャンパスの地理的な要因の関わる問題(7名)時間割の見直し(18名))が寄せられています。今回調査の結果から、十分な対策が行われていないことが分かります。

 しかし、キャンパスミーティングの結果『休憩時間が短く、授業間の移動が大変である』という意見を受け、201141日より休憩時間を5分間延長する事が決定されています。

提言

 カリキュラムに関する問題について学生が積極的に意見発信をしていくことを提言します。当事者の大部分である学生が説得力のある要望が出せないと問題は解決されません。本調査や教務課のアンケートに学生が積極的にこたえることは問題解決のきっかけになります。

・事前調査(問題点の洗い出し)

・事前調査で分かった問題点に対して、それを問題と思っている学生の数の調査

・問題点の対策方法の募集(学勢調査の自由記述などを利用)

・調査結果をもとに関係各所へのインタビュー

といったことを、本調査や各学科で行うことで効率的な改善が行われると思われます。

具体的な問題に対して

 前回調査の結果を受けて休憩時間が変更になります。それにより教室の移動などが容易になりますが、一方で部活動などへ影響が考えられます。この問題に関しては継続的な調査が必要です。

 また、すずかけ台-大岡山キャンパス間移動の問題に関しては、動画配信授業等を利用し、キャンパス間の移動を減らすことはできないでしょうか。キャンパス間移動は学生にとって時間的・金銭的な負担が大きいので早急な改善を求めます。


 

5.6.2  文系科目への要望

提言概要

文系科目を充実させてほしい

学生の意見

文系科目の充実を求める意見が4件寄せられています。

具体的内容

・文系授業をもっと充実してほしい。(同様の意見が4)

・専門科目はともかく、文系科目の初回講義は時間を半分にして2回ガイダンスを実施するようにしてはどうでしょうか。いくつかの講義の内容を聞いてから、選択したいです。

現状分析

 前回調査に引き続き、今回調査でも文系科目の充実・新しい授業の追加を求める意見が4件ありました。しかし、現在東工大では文系科目・文明科目・総合科目合わせて400近い講義が開講されています。また、授業の追加を求める意見においても、追加してほしい授業に関してはバラバラであるのが現状です。

 

質問(教務課)

 開講する文系の講座を決定方法。および学生意見の反映可能性。

回答(教務課)

 全学科目については、それぞれに実施委員会が設置されており、その委員会において科目の検討を行っています。

専門科目だけではなく、幅広い視野と知見を見につけてもらいたいというのが全学科目の趣旨ですので、学生のニーズに合わせることが必要と思いますが、学生の意見が拡散していては新たに文系の科目を開講することにしても数に限りがある以上、対応は難しいと思います。

ある程度学生の意見がまとまれば、それを要望として各実施委員会にお伝えして検討いただくことは可能と思われます。

また、本学では文系大学である一橋大学(四大学連合複合領域コースへの所属が必要)・慶應義塾大学・お茶の水女子大学の講義を受講できるようになっています。是非その制度を活用していただきたいものです。

提言

現状分析のように学生意見が拡散した状況では授業追加の要望を出すことはできません。

従って、次回学勢調査や別調査による、学生のニーズの明確化が必要ではないでしょうか。増やしてほしい授業の分野に関する選択式アンケート項目(法・政治・経済・文・芸術など)と、具体的な内容に関する自由記述(たとえば法を選んだ場合には『知的財産に関する授業』など)を組み合わせることで学生のニーズを測ることができると思います。その中で特に多かった意見を提言とすることで学生の要望を実現しやすくなると思います。


 

5.7  単位・成績

提言概要

成績評価方法の公開基準の標準化

学生の意見

成績評価方法の公開・標準化

具体的意見

・成績は学科所属や大学院への内薦の判断に利用されているのに、授業ごとの成績のつけられかたは全くわからないという状況はあまり良くないと思います。

I think something has to be done to standardize the system in all faculties. Currently, each faculty has its own way of evaluating students in exams, deciding labs for 4th year undergrads, etc. This happens because faculty heads are given plenty of freedom to do whatever they see fit. It may be a good way for passionate professors to do the best for the faculties.

(以上2件)

現状分析

 上記のように成績評価方法の公開を求める意見が寄せられました。また、これは授業の種類において大きく異なるので難しいと思いますが、成績評価方法自体についてもある程度の共通基準を作った方が良いという意見も一件見られました。

現在でもOCWのシラバスにおいて成績評価方法に関する項目がありますが、授業ごとに、具体的な数字を挙げるものから非常にあいまいな表現のものまで様々であり、授業によってはほとんど情報を得られないといったものもある状態です。

学勢調査2008との比較

学勢調査2008では「成績評価・単位認定の基準の明確化」の自由記述欄に成績の付け方の公表を求める記述がありますが、今回調査の自由記述を見るとこういった状況は改善されていないと思われます。

提言

成績評価方法の公開について、どの程度まで公開するべきか共通の基準を作ることを提言します。

 このため大学側でOCWにおける成績評価方法の公開について一定の基準を作り情報公開を促すことを求めます。これには、成績評価方法をだれでも見ることができる大学のホームページ上で公表する事により評価の透明性が増す効果も期待できます。

また、OCWにおいてこのようなことができない場合でも、授業ごとの成績評価方法について一定以上の情報が得られるよう新たな窓口を設けていただきたいです。

もちろん授業を担当する教員ごとの意見の違いもありますので一律の基準を作ることは難しいかもしれませんが、その場合でもより多くの授業で成績評価方法の情報が得られるように情報公開を促してもらいたいです。

 授業の成績は学科所属及び大学院入試に使われるものであるので、学生は成績評価について単位申請前に十分な情報を得ているべきです。


 

5.8  その他

その他に、下記のような意見が寄せられました。

 

5.8.1  研究および研究室に関して

具体的内容

・教員の研究以外の仕事による負担が多い。(同様な意見が3件あります)

Please also make a manual book of the experimental equipment in English. (同様な意見が2件あります)

Professors should try to listen to what the students want to research in their lab, instead of pushing a project to them.

・教授が威圧的。学生の研究への配慮が足りない。

・研究室にタイムカードを導入(実際の研究時間の把握のため)

・研究室の教授は忙しく、学生への対応を上級生に投げている部分がかなりあると思います。

・専攻毎で研究室ルールを統一してほしい。

 

5.8.2  授業の実態

具体的内容

・研究に忙しすぎる教授もいて講義がある意味楽になってしまうことは少々残念。

・各授業の一貫性がない。(途中で教授が交代する等)

・理学系の専攻で設けられている授業は実用性に乏しい。授業は研究をする上ではためになるが、就職活動などの役には立たない。

・学んだことが研究室で生きない、もしくは時間がたちすぎて忘れる。

 

5.8.3  カリキュラム

具体的内容

・少人数の授業(同様な意見が3件あります)

・講義動画のweb配信(同様な意見が2件あります)

 


 

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