学生のモラル・マナー関係

 ここでは、提言書作成の過程の中で浮かび上がってきた「学生のモラル・マナーの向上」について、大学側にその促進のために行って頂きたいことを、提言として述べていきます。

提言概要

 今回の学勢調査での提言書作成の中で、『学生のモラル・マナー向上の必要性』が浮かび上がってきました。具体的には、以下の様なものが挙げられます。

・喫煙に関するマナー
・南1号館側通り抜け通路
・節電警報時の空調オフの徹底
・構内駐輪関係
・附属図書館の図書への書き込み・落書き
・大学所有物への書き込み・落書き
・共用スペースでの会話・騒音

学生の意見と現状分析

 喫煙に関する今回の定量的調査の結果は、図4.6-1,2の通りです。

図4.6

図4.6-1 キャンパスの禁煙対策への認識


図

図 4.6-2 喫煙マナーへの認識


 キャンパス内の禁煙対策が整っていると考えている方が、多数派となっています。また、社会的な禁煙化の波を受けてか、「喫煙所の場所が悪い、場所を変えてほしい」「喫煙所を減らしてほしい」といった更なる規制の強化を求める声が7割近くを占めています。
 具体的にどういった問題があるのかを示すために、喫煙マナーに関して今回寄せられた自由記述の一部を、表4.6-1に示します。

表

表 4.6-1 喫煙マナーに関する自由記述


喫煙マナーに関して寄せられた自由記述:全201件

以下、内訳。
規制強化:73件  喫煙場所の削減・移動など:16件
規制緩和: 4件  不満なし:105件  その他:3件


 これらの自由記述を受けて、最も重要だと考えられるのは、歩行喫煙への規制です。これは学生だけでなく、教職員にも見受けられるという意見もいくつか寄せられました。
 歩行喫煙は校内だけでなく、キャンパス近辺でもされているという意見も寄せられています。また、本学キャンパス内にはウッドデッキ・芝生スロープなどを訪れる子供連れの近隣住民の方や、構内を通学路として利用している小・中学生も多く、安全面を考えて規制をかけるべきと考えられます。

 また、喫煙所以外で喫煙を行っているといった意見も寄せられました。喫煙者は非喫煙者に迷惑をかけないという義務を負った上で、喫煙する権利を持つと考えられますが、これには喫煙所の設置数だけでなく、どこに喫煙所があるのかが伝わっていないことも原因に考えられます。それに関連して、現在の設置場所の一部を見直してほしいという意見も見受けられます。

 学内から学外へと通じている南1号館側の通路について、「開放して欲しい」「なぜ昼休みに警備員が立っているのか分からない」といった意見が寄せられました。この原因としては、学生側に規制の理由が伝わっていないということを「2.1 学生・大学間のコミュニケーション」でも述べました。

 本学では夏期に節電警報が発生した際に、講義室・研究室等の各施設の空調をオフにすることになっていますが、実際には学生室などで徹底してない箇所もあるようです。
 原因としては、節電警報の存在理由が学生間に浸透していないといったコミュニケーションの問題があると考えられます。また、誰が空調をオフにするのかといったことが、学生のみが居る学生室などでは決まっておらず、責任の所在が明確になっていないと考えられます。

 学内での駐輪のマナーが悪いという意見が寄せられました。これに対して、駐輪場の整備状況と、自転車利用登録状況を分析します。
 まず、図4.6-3から分かるように、本学では3割前後の学生が学内移動に自転車を利用していることが分かります。まず、これを許容するだけの駐輪場のキャパシティを、各地区の学生数に対応して設置したり、昼休み時に学生が集中する生協第一・二食堂付近に十分なスペースを用意したりする必要があります。

図

図 4.6-3 本学全体と学年別の学内移動の自転車利用


 これに関連して、学生の感じている駐輪施設の充実度を示したのが、図4.6-4です。「整っていない」「あまり整っていない」と答えた学生が、5割弱を占めています。

図

図 4.6-4 駐輪施設の充実度


 この原因としては、以下の2つが原因として考えられます。

・駐輪施設のキャパシティが需要を満たしていない
 先述した自転車利用者数が、駐輪施設のキャパシティを超えていることが考えられます。また、キャンパス全体のキャパシティが需要を満たしていたとしても、地区・講義棟ごとの学生の集中度に対応していなかったり、昼食時などのピークなどに対処出来るキャパシティがなかったりすることが予想されます。

・駐輪施設のインセンティブが弱く、実質的な充実度が低い
 仮にキャパシティが学生の需要を上回っていたとしても、駐輪施設を利用するインセンティブが弱く、実際の利用者が少ないことが考えられます。例えば、今年度新たに設置された石川台地区の駐輪場は各講義棟から距離があり、学生は従来通り駐輪場でない講義棟前に駐輪するため、実際の利用度は低くなっています。


 次に、学内における自転車の利用登録状況を分析していきます。図4.6-3の項目において「利用している」と答えた方をさらに自転車利用登録に「登録している」と「登録していない」とに分けたのが図4.6-5です。ここから分かりますように、学部1年時は高かった登録率が、2年になると同時に7割前後に落ちていることが分かります。この理由としては、学部1年時は入学時のガイダンスにおいて利用をアナウンスされますが、2年時以降は「いつ、どこで、どんな手続きをすればいいのかが分からない」「毎年手続きを行うことが面倒だ」といったことが考えられます。

図

図 4.6-5 学年別の自転車登録状況


 少数の学生とは思いますが、各施設の設備や、附属図書館の図書への書き込み・落書きが存在します。これに対しては個人のモラルの問題が大きく、大学側でも対策を取りにくいものと思われますが、度が過ぎたような場合には対策をする必要があると考えられます。

 附属図書館内のリフレッシュ・ルームなど、すぐ近くに静粛なスペースがあるにも関わらず、大声で話しているケースが存在します。会話を許されているスペースではありますし、これも個人のマナーの問題が大きいですが、頻繁に見られる場合には注意などを行った方が良いかと考えられます。

具体的提言

 まず、冒頭の歩行喫煙に関しては、学内・外者の安全に関わる問題ですので、規制をかけるべきと考えられます。
 それ以外に関しては、「学生のマナー・モラルの改善を大学側で促進」を提言します。これらの意見については、もちろん学生側のマナー・モラルの問題が大きいと感じています。ただ、「どうしてそれを守らなければいけないのか、必要性が分からない」「必要性はある程度理解しているが、面倒であったりする」と言ったように、故意にルール・マナーを破っているというよりも、守る必要性が分からないというものもあり、これもまたコミュニケーションの問題と考えられます。以下に、具体例を述べていきます。

 学外者の中には、どこに喫煙場所があるのか分からない場合もあるかと考えられます。本学構内は分煙であることと、どこに喫煙所があるのかの明記をした上で、喫煙所以外での喫煙は注意喚起をするのがよいと考えられます。

 南1号館傍の通り抜け通路への規制に関して、学生に不満がある理由の1つには、規制の理由が学生側に伝わっていないことが考えられます。理由が不明確なまま制限をかけられるため、余計に不満が高まるということです。学生へのメール、ホームページでの伝達や、通路付近での表示を行い学生側に周知することで、よい変化が起こると考えられます。
 同様に、節電警報時の空調オフについても、その必要性を周知することが必要と考えられます。必要性が伝わっていない現状では、あまり改善は見込めないと予想されます。

 同じく節電警報について。学生が空調オフしない原因の1つとして、「誰が電源オフにするかが決まっておらず責任の所在が明確でない」ということも考えられます。研究室の学生室などの場合、役割を明確化し、責任の所在を明確化することが、マナー・モラルの改善を促進する1つの方法と考えられます。

 石川台地区の駐輪場は、教職員からの要請があり設置したと学生支援課から伺いました。現状の利用率が低い原因の1つには、「実際に利用する学生側からの意見聴取が不十分であった」ということが考えられます。これを未然に防ぐためには、「ここに設置した場合、利用するか」と言ったことを、学生にヒアリングすることが効果的だと考えられます。

 駐輪に関連して、学内の放置自転車も問題の一つと伺っています。これに対して、学生側が取り組む活動が他大学に存在しています。一橋大学などは、エコチャリというプロジェクトを行っています。(参照:http://ecochari.com/top.html サイトページ:図4.6-6)これは、大学構内などの放置自転車を撤去・修理し、貸し出すという活動です。学生のマナー・モラルといった問題に対し、同じ学生が参加する活動によって意識を高めるという効果が見込めます。

図

図 4.6-6 エコチャリのホームページ


 こういった「大学の問題に対し、学生が中心となって取り組む」といった対応は、放置自転車だけでなく現在起こっている問題にも応用出来ると考えられ、また大学の問題を学生の手により改善に向かう体制を築き、学生の意識の向上にも繋がると考えられます。


 以上の様に、「大学側が促進しつつ、学生のマナー・モラルの改善を目指す」ことを提言します。

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2010 Tokyo Institute of Technology