3相の <ことつくり> で社会へ架橋する
―問題解決型支援から成長促進型支援へ― |
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取組担当者:理事・副学長(教育担当)
学生支援センター長 齋藤彬夫 |
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1.取組の背景・目的 最近の学生相談の傾向として、自己表現力や相互援助力の低下、学生の孤立・ひきこもり、思わぬトラブルやうつ状態(心理的な落ち込み)にはまり込む学生等がしばしば見られ、カウンセラーの増員等による相談体制の充実化が追いつかない状況にある。それゆえこれからの学生支援の方向性として“学生が駆け込んできてから対処する”という「問題解決型」の支援のみならず、“大学から積極的に働きかけるプログラムを提示する”「成長促進型」支援を工夫・立案する必要性が高まっている。とりわけ相談内容では「対人関係」に関するものが最も多く、“東工大生は社会性・協調性に欠けるのか?”危惧される事態になっており、「国際的リーダーシップを発揮できる創造的人間の育成」という教育目標に向けて、“社会性の獲得”や“自発性の涵養”をめざす試みが求められていた。このような現状を打破するために、たくさんの支援形態が幾重にも重なり、かつ姿を変えながら学生を育て支えていく、3相の<ことつくり>を通じて、社会へ架橋するプランを立案した。 2−1.<ことつくり> 第1相:できごとの「事」 第1相の趣旨は、学生生活にたくさんの<できごと>を巻き起こし、仲間とのコラボレーションの機会を増やすことにある。そのために既に学内で活動中のキャンパスガイド・広報サポート・ピアサポートの3つを起点に、「学生シンクタンク」と名づけた組織を立ち上げて、学内外でさまざまなニーズを新たに発生させ、広く学生を結集したムーブメントとして展開していく。
学生シンクタンクは徐々に学生主体の運営をめざすことになるが、立ち上げ時あるいは必要時には教職員が関わる体制が必須であり、“現状を活性化する”“社会とつなぐ”“新企画創世”という「コーディネート機能」を果たすべく、GP教員と事務スタッフを選定し、既に活動を開始している。また、学生間をつなぎ、必要な情報を学内各所で瞬時に共有できるよう「電子掲示板システム」を構築しつつあり、これにより臨機応変に<ことつくり>活動を組み立てていくことが期待される。現在、各サポーター学生から意見/希望を聴取するとともに、新たな企画として他大学の学生との交流を促す形態で「ゲームコンテスト」を立ち上げたところである。 2−2.<ことつくり> 第2相:ことのはの「言」 ひとは言葉をゆたかにすることで、すなわち言葉にして他者に語り、文章として明確化・固定化することによって、自らを襲った不条理を乗り越えていく力を培っていく。コミュニケーション力・文章力の獲得は、理工系学生にとっては人格形成にとって必須であるばかりでなく、高度に専門化された科学技術の世界を非専門家に伝えていくためにも、きわめて大きな課題となっている。それゆえ、第2相では「文章コミュニティ」として「コラムランド」&「サイエンスカフェ」という2つの活動をさらに拡大・充実させることで、狭い世界や価値観に捕らわれずに、自分の言葉で考えや気持ちを発信できる学生を育てることをめざす。
「サイエンスカフェ」は“科学技術のトピックをめぐり、専門家と一般市民が語り合うイベント”で、これまでは大学院生中心に実施されてきた。トピックスの選定(例えば、電池=エネルギー問題、重力=ペットボトルロケット等)から当日の雰囲気づくり、情報提示や会話の進め方まで多大な工夫が必要となるが、伝える・聞く努力や、異なる価値観に出会った戸惑いなどを通じて学生が学ぶものは大きい。「サイエンスカフェが創れる研究者になろう」をコンセプトに、まずは学部生対象のセミナー「言語・文化・情報シリーズ」を実施し、「対話する」ためには単なる表現の問題を超えてどんな思考やスキルが必要かについて考えさせている。また今年度の東工大サイエンスカフェは、学部生も開催に協力することになっており、学部生ならではのアイデアや大学院生との生き生きとしたコラボレーションが期待される。 2−3.<ことつくり> 第3相:ことなるの「異」
第3相では、各種イベントの開催によって親睦を深めるとともに、異文化理解を促進する方向で活動を展開していくことで、異国で奮闘する留学生を支えるのみならず、豊かな多文化が共生するキャンパスづくりを通して、日本人学生の意識を変えていくこともめざす。すでにAssociationは今年度内に設立準備を終え、さっそく各国留学生ならびに日本人学生を交えたSports Festivalを開催するなど、多様な交流が開始されている(図3)。 3.新たな試みの有効性とこれから
「成長支援型」の諸活動を展開していくことで、学生たちは自らのちからで問題に立ち向かう力を獲得するとともに、仲間関係の中で相互的に支え合うことが期待できる。あるいは問題がこじれる前に迷わず相談室を訪れ、自らの言葉で語ることによって早期の改善が計られ、さらには相談で自信と元気を取り戻した学生が拠り所となる場・活動を学内に見つけられる環境が用意されることになる。「問題解決型」支援へのフィードバック効果が生じ、“教育の一環としての学生相談・学生支援”としてより幅広い学生に門戸を開いていくことができる。 また、活動拠点として「学生支援センター」(図5)の整備を進めており、副学長(教育担当)中心の「運営部門」のもと、「学習支援部門」のカウンセラー、「健康支援部門」の医師、「キャリア支援部門」のキャリアアドバイザーと併せ、本取組のコーディネーターは「キャンパスライフ支援部門」に所属することになり、各4部門に専門性を持った教員がしっかりと関わる体制が整備される。また全学的な理解を得て学長裁量スペースとして「学生支援(GP)室」が確保されている。 さらにこの3相どうしの交流を計るための<ことつくり>学生シンポジウム、教職員対象の「学生支援力」向上企画、国内外先進校への実地調査・交流といった事業を加味することで、“自律性・双方向性・国際性・総合性”という言葉に集約される本学の「4本柱の学生支援体制」をいっそう推し進めていくことになる。実施期間として想定された4年間に、「学勢調査」によって学生たち自身からの評価を仰ぐとともに、学生たちの活動を迎え入れる小学校等や地域社会・産業界からの評価を取り入れ、取組の展開に適宜フィードバックしていく。そして種々の活動が相乗作用を及ぼす新しい「学生支援のかたち」を見出し、全国に発信していくことを期している。 |
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※ 上記説明は、平成20年2月9日(土)に文部科学省および財団法人文教協会が主催する 「平成19年度大学教育改革プログラム」に参加した際に配布した資料と同一のものです。 資料: 『3相の〈ことつくり〉で社会へ架橋する−問題解決型支援から成長促進型支援へ−』 申請書(PDF) 申請にあたっての資料(PDF) |
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※自律支援部門→未来人材育成部門(学生活動支援窓口)へ 名称変更となりました(2021年6月)