■理工系学生能力発見・開発プロジェクト ,平成27年度京都大学防災研究所研究発表講演会に参加

日程: 2016年2月23日(火)〜24日(水)
場所:京都大学宇治キャンパス
参加学生:1名


【学会見学プログラム報告】

 ◆参加学生

所属/学年:1類/1年


 ◆参加学会

平成27年度京都大学防災研究所研究発表講演会


 ◆今回の学会に参加した目的と、学会を見学しての全体的な印象、および見学したセッション等の報告内容について

今回参加した京都大学防災研究所(以後「防災研」)では、地震・火山・台風など様々な自然現象によって引き起こされる災害について、被害を最小限に止め、早急に復興できるような技術の開発と防災能力の向上を目指した研究を行っている。理学的で専門的な研究をどのように社会に還元していくのか、ということについて知り、自分の研究が社会でどのように役に立つのか、実際の取り組みと成果から考察するという目的のもとに今回の講演会に参加した。
全体的な印象としては、防災研での研究報告を研究者同士で共有するという雰囲気が強く、内容についてはある程度の知識がないと理解するのは難しいように感じた。ただ、防災に関するセッションでは、研究をどのように社会に還元させるかということに焦点を置いていたので、一般の聴衆に対してもわかりやすい内容となっていた。
2日間で見学したセッションは、以下の5項目。
(1)特別講義など
 阪神淡路大震災後、地震に限らず台風や豪雨などの巨大災害が多発している。今後、そのような災害から身を守るためには、被害を軽減するための「予防力」に加えて、できるだけ早く復興する「回復力」が必要であり、総合的な防災能力の向上が求められる。 復興計画における目標は都市・経済・生活の再建である。実際に阪神淡路大震災の例を見ると、都市と生活の再建に関しては土地計画→がれき撤去→社会基盤復旧を行い5年で完了した。ここでは、経験値と数値目標の具体的な設定が重要となる。しかし、経済に関しては未だに完全に復興したとは言えない。その原因は@短期間に巨額の資金が流入してしまったこと、A被災者が公助に依存していること、そして?利用者ばなれが進んでいることがあげられる。 また、経済状況が復興感に影響することもわかっている。阪神淡路大震災では民間資産へのダメージが大きく、東日本大震災では公的資産へのダメージが大きかった。次に起こり得る南海トラフでの地震が引き起こす経済面での問題は、この両方への損害の可能性が示唆されている。
(2)災害調査報告
 このセッションではネパール地震、鬼怒川の洪水、口永良部島噴火、そしてバヌアツでのサイクロンの4つの災害の調査報告が行われた。
@ネパールの地震:Mw7.8の巨大地震が発生し、被害は9000人に及び東西方向に200 kmのすべりが生じた。被害が拡大した要因は、現地の建物が基本的にレンガ造りで崩壊したこと、またカトマンズ盆地で地震波が増幅されたことが原因。
A鬼怒川の洪水:「一級河川の破堤を伴う大規模水害」と呼ばれる。8000棟以上が被害を受け、4300人が救助される大規模災害である。ハザードマップでは、今回の被災域はほぼ全域が浸水想定区域だったのに対し、浸水後に主要幹線道路が通行止めになって渋滞が発生するなど、課題が残った。
?口永良部島噴火:80年〜90年おきに死者多数となる噴火が発生。噴煙高度は10 km。噴火後も地盤の膨張が継続しており、マグマがまだ残っている可能性が示唆されている。
Cバヌアツサイクロン:被害が少なかったとはいえ、外部から導入されたものの不適切な使用が被害拡大の原因のひとつとなった。
(3)地震・火山セッション
 活断層の運動の調査や分析、地殻に働く応力など地震発生のメカニズムに関する研究の発表が行われた。火山セッションは2日目の後半に集中していたため見ることができなかった。
(4)ポスターセッション
 様々な分野の成果報告がポスター形式で発表されていた。印象に残ったのは京都大学における地球科学実習教育の成果報告と歴史書の電子化に関する研究、そしてたまねぎ状風化の原因に関する研究の3つである。歴史書の電子化は一見、地球科学と関係のない分野に思えるが、過去の書物には地球に関する数多くの記録が残されており、それらを解読して情報を得ることは重要である。
(5)防災セッション
 「減災プロジェクト」に関する成果報告が行われた。専門的な研究をどのように社会に還元していくのか、その具体例を知ることができた。(例:津波のシミュレーションから最適な避難の方法を考える防災教育など)




 ◆今回の学会見学が、あなたの理工系の能力開発にどのように影響しましたか

 地震のセッションにおいて、地震の誘発過程に関する発表があった。簡単に説明すれば、遠方で発生した規模の大きい地震が別の地域に応力変化を生じさせることで地震を誘発していた、という発表である。学部1年生の私は発表を聞いている限り、具体的な応力の大きさの数値は出ているし、地震波形から前震とみられる地震を調査していたので、地震を誘発する可能性も示唆できると思った。しかし、質疑応答の時間で、こんな質問が飛んできた。
「地震の誘発に関してはまだ検証されていないのに、なぜそのような推測(考察)ができるのか」
この研究チームの研究テーマは「静岡の地震の誘発過程とは」で、2011年に起きた福島県沖の地震と静岡県で発生した地震についての考察であった。そのため、調査対象が極めて限定的であり、結論が出てもそれが直接一般化されることは極めて難しい。すなわち、定性的な研究ではあるが、定量的なものではないという指摘であった。一見、発表を聞く限りでは納得しそうになったが、研究の世界で認められるためには定量的な結果・考察が必要不可欠であることを改めて認識した。
 私は将来、地震の一般的なメカニズムを解明し、その研究成果を防災に役立てようと思っている。今回の学会で防災セッションの発表を聞くと、防災分野におけるアウトリーチ活動は理工学系の研究者よりも、社会学などの文系の研究者が熱心に取り組んでいることがわかった。理学と減災額を融合させるのは非常に難しく、さまざまな障害があるため、それぞれの分野を越えて協力することで課題を解決していく必要があると感じた。



 ◆学会見学プログラムについての反省点や今後への提案

現地の先生と予め連絡を取り、事前学習を行うとより有意義な見学ができるのではないかと思った。また、一人で訪問するのも自由でよいが、理工系プロジェクトメンバーで訪問して、ディスカッションなどをするのも良いのではないかと思った。

 ◆今回の学会見学での成長についての自己評価
      1.全く変わらない 2.少し成長した 3.まずまず成長した 4.とても成長した


a.) 学習(研究)に対する意欲[ 3 ]
b.) プレゼンテーション力・質問力[ 2 ]
c.) 理工系分野の専門性[ 4 ]
d.) 国際性[ 1 ]

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