本学の入試改革について、以下の意見が寄せられました。

学勢調査2024では、設問No. 9-2「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン、ダイバーシティ&インクルージョン(DE&I、D&I)の観点から全ての学生が過ごしやすくするために、改善すべき点があれば教えてください」と設問No. 9-4「最後に全体を通して意見があれば自由に記入してください。」に入試女子枠への意見が多く寄せられました。学生の関心が高いことが分かります。

最も多かった意見は、女子枠への反対意見です。反対の理由としては特に以下の意見が多く寄せられました。

次に多かったのは、女子枠設置について説明を求める意見です。特に説明を求める理由として以下の意見が寄せられました。

本調査では女子枠に関する選択式の設問を設けていませんが、学勢調査2022追加調査では、女子枠に関連した調査を行いました。設問No.27「女子学生の比率が増えることについてどう思いますか」では、女子枠という入試方法から離れて、大学内で女子学生の比率が増加することそのものについての意見を調査しました。そして、設問No.30「女子学生比率の増加という目的とその方法論を受けて、女子枠を導入するという取り組み全体についてどう思いますか」では、女子枠という入試での取り組み自体への賛否を調査しました。

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図5-3.1学勢調査2022追加調査設問No.27「女子学生の比率が増えることについてどう思いますか」と設問No.30「女子学生比率の増加という目的とその方法論を受けて、女子枠を導入するという取り組み全体についてどう思いますか」の回答比率と回答数

その2問について、回答比率と回答者数をまとめたデータを図5-3.1として示します。女子比率が増えることそのものについては、過半数の学生が肯定的な意見を持っていることが分かります。一方で、女子枠という取り組みについては、「どちらかというと反対」と「反対」という回答の和が過半数を占めており、「賛成」と「どちらかというと賛成」の和については回答の約3割という結果になりました。

2025年度4月入学者のための入試では、総合型・学校推薦型選抜を合わせて143人の女子枠を導入しています。この人数は学士課程1学年の募集人数1,028人の約14%を占めます。現在の学士課程全体の女性比率は約13%です。女子枠の導入により、学士課程入学者の女性比率は20%以上になることを見込んでいます[1]

本学HP[2]では、女子枠導入の意義として、「本学のみならず、日本の学士課程の理工系の女性比率が低迷しているのは、その根底に歴史的な男女差別やアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)の影響があると考えられます。(中略)学びの環境におけるダイバーシティ&インクルージョン(D&I)推進の第一歩として、理系分野は男性の領域だから、あるいは本学の女子学生は少数派だからなどといったアンコンシャスバイアスにとらわれることなく、優秀な女子学生にぜひ本学に入学してほしいというメッセージを強烈に打ち出す必要があると考え、一般選抜(前期日程)とは異なる総合型選抜及び学校推薦型選抜のなかに、一般枠とならんで女子枠を導入する判断をしました。『女子枠』導入は、それを是正するためのポジティブアクション(男女共同参画社会基本法第2条に定義される『積極的改善措置』)の一つです。この環境の実現に向けて、性別だけでなくエスニシティなど多岐にわたる配慮を行いつつ、男性が圧倒的多数を占める本学学生数の現状において、男女格差の是正を行うことはD&I実現の一歩となります。」と説明しています。

また、ポジティブアクションの取り組みの期限として、「今回の『女子枠』導入にとどまらず、多様性を確保するための諸施策を引き続き実施し、それらの効果について常に検証するとともに、『女子枠』を上記のポジティブアクションとしての特別措置と捉えて、今後も、D&Iの進捗状況に応じて、施策実施期間の設定・選抜方法等を見直していく方針」(太字・下線は学生スタッフによる)と説明しています。一方で、本学は「施策実施期間の設定・選抜方法等」については公開していません。また、学士課程における女性比率増加やアンコンシャスバイアスの解消を調べるための指標や方法も示していません。

これらの現状を踏まえ、女子枠が設置された経緯と目標設定について調査するため、入試課とのキャンパスミーティングを実施し、以下の回答をいただきました。

Q1.女子枠における具体的な目標(特に数値目標)は設置・公表されていますか。

A1.具体的な目標(特に数値目標)は、設置・公表していません。

Q2.女子枠の効果は具体的にどのように検証している、またはする予定でしょうか。

A2.まずは女子枠を設置した効果として女性比率が上がったかどうか、さらに、入学後の成績も含めて検証を行い、常に見直しを行っていく予定です。

Q3.目標が達成されるか達成が近づいた際に、女子枠は撤廃されますか。

A3.具体的な目標を設置しているものではありませんが、女子枠の設置は時限的な特別措置のため、女子枠の設置が必要なくなるくらい女子学生が増えれば、見直されることになります。

Q4.女子枠の女子の定義(社会的・精神的な性ではなく、戸籍上の性で定義する方法)、人数、選抜方法はどのような経緯で設定されたのでしょうか。

A4.決定は学長のリーダーシップによるトップダウンですが、総合型・学校推薦型選抜は各学院で実施するため、各学院で綿密に議論・検討を行い、大学として取りまとめました。

以上を踏まえて、女子枠導入をはじめとした入試改革について次のように提言します。

  1. 女子枠設置を通じた女子学生の割合向上や男女格差の是正における具体的な目標を設定し、公開する
  2. 女子枠における目標設定がされないまま、施策だけが先行している状況だと考えます。施策実施期間の設定・選抜方法の見直しのために、まずは目標を設定し、公開することを求めます。

  3. 女子枠を特別措置と考え、目標達成までのロードマップを作成し、公開する
  4. 本学HP[3]において、女子枠はポジティブアクションの一環として位置付けられていますが、

    などの検討・実施状況が明確になっておらず、どのように入試改革の目標を達成するのか明確ではありません。そのため、女子枠という特別措置の施策廃止までのロードマップを作成し、公開することを求めます。

女子枠に対する意見の中に、次のような意見が寄せられました。

このような他の入試方法を検討すべきという意見のうち、具体的な方法として挙げられていたものは以下の通りです。

入試課とのキャンパスミーティングでは、女子枠の設置された経緯と目標設定についての質問と同時に、他の入試方式の検討状況についても、以下のように回答をいただきました。

Q5.より多様な学生に入学してもらうため、一般入試での理科科目に生物入試を導入することは可能ですか。できないとしたら何が課題ですか。

A5.検討中です。

Q6.医歯学系の保健衛生学科や口腔保健学科は理工学系の男性比率よりもさらに高い女性比率です。そのような学部について、男子枠の設置はありますか。

A6.今のところ、その予定はありません。

真に多様性を推進する環境を育てるための入試方式として、「女子枠」に限定されない、様々な方法が挙げられていました。他の「枠」や生物科目の導入など、より多様な観点を取り入れた入試制度が求められています。

脚注

  1. 旧・東京工業大学「東京工業大学が総合型・学校推薦型選抜で143人の「女子枠」を導入」:https://www.titech.ac.jp/news/2022/065237(最終閲覧日:2025年2月25日) ↩︎
  2. 旧・東京工業大学「東工大ダイバーシティ&インクルージョン」:https://www.titech.ac.jp/diversity-inclusion#initiatives-system(最終閲覧日:2025年2月25日) ↩︎
  3. 旧・東京工業大学「東工大ダイバーシティ&インクルージョン」:https://www.titech.ac.jp/diversity-inclusion#initiatives-system(最終閲覧日:2025年2月25日) ↩︎