本学におけるダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン、ダイバーシティ&インクルージョン(DE&I、D&I)に関して、以下の意見が寄せられました。
- 女性用の設備を整備するだけではなく、男性のための施設状況の改善をしてほしい(同様意見26件)
- 女子枠導入後、女子枠に関連した中傷(セクハラ)を受けた、または見聞きした(同様意見10件)
- 日本的な慣習だけではなく、グローバル基準のキャンパス整備を行うべきである(同様意見10件)
- 英語での情報提供を充実させてほしい
- 女子枠の導入自体が性差別である、性差別を広げるものである(同様意見6件)
- DE&Iに関して学生があまり理解をしていないと感じるため、必須教養的な授業を作っても良いと思う(同様意見2件)
東工大では、2024年4月入学の学士課程入試から、総合型選抜および学校推薦型選抜において、女性を対象とした「女子枠」を導入しました[1]。学勢調査2024は、女子枠で入学した学生が在学している状態で初めて行われた調査であり、女子枠で入学した学生やその周囲の学生からも意見が寄せられました。
また、2023年度の統計データ[2]によると、東工大には全課程合わせて1,854人の留学生が在籍しています。学勢調査2024にも409名の留学生が回答しており、英語での情報が欲しいという意見や、ハラルフードの提供に関する意見も寄せられています。
本学理工学系では、DE&Iに関する授業として、文系教養科目の選択科目で「教養特論:ジェンダー・セクシュアリティと文化批評[3]」や「教養特論:障害学[4]」などが開講されています。しかし、いずれも単発で開講される教養特論で、ひとつの学問領域について「○○学A」(100番台)→「○○学B」(200番台)→「○○学C」(300番台)のように連なって開講され、積み上げ式の学修が可能な授業ではありません。また、その他の教養科目、専門科目においても全学生がDE&I全般について考え議論するような授業は設けられていません。他大学では、以下に例示するように、DE&Iに関する授業に全学的に取り組んでいる事例があります。
他大学の例
- 大阪大学[5]
- ダイバーシティ&インクルージョンの世界
- 全学共通教育科目
- 学内外から毎回異なる講師を招くオムニバス形式で実施
- ダイバーシティに関して様々な側面(生物学的側面・社会学的側面、法的側面、国際的側面等)からその本質を学ぶことができる
- 芝浦工業大学[6]
- ダイバーシティ入門
- 全学共通科目
- ①ダイバーシティの理解、②ダイバーシティの諸相、③ダイバーシティの推進・活用の実践から構成
- 講義以外に学外ゲストによるリアルな話題提供や学生間の対話が中心
多様な背景を持つ学生を受け入れ、DE&Iを推進しようとしている中で、DE&Iに関しての様々な意見が学勢調査に寄せられた現状を鑑みると、本学でも同様の対応をしていくことが必要だと考えます。特に、本学理工学系では入試女子枠の導入など、他大学よりも多様性を意識した制度の導入をしているため、継続的な学修の機会を多くの学生へ提供することの重要性は高いといえます。
以上の現状を踏まえ、社会連携・DE&I本部、ダイバーシティ推進課とキャンパスミーティングを実施し、以下のような回答をいただきました。
Q1.DE&Iの理解促進のためには議論の機会も必要だと認識しています。DE&Iについて意見交換する場所として現状設けられている、または設置を検討している機会があれば教えていただきたいです。
A1.2024年10月1日より、DE&I推進のため、社会連携・DE&I本部にDE&I部門を設置しております。大学全体としてDE&Iを推進するためには、各所の状況を把握していく必要があると考えており、DE&I部門には、DE&I推進員として、各学院等、関係事務部署等の教職員が参画し、連携が取れる体制をとっています。また、DE&Iについて学生同士で議論や意見交換する場として、2025年度より、全新入生共通の必修科目である「立志プロジェクト」の1テーマとして取り上げることが決定しています。
Q2.DE&Iに関する授業の必修化について提言しようとしているのですが、そのようなことは検討されていますか。
A2.前述の「立志プロジェクト」に加え、2025年度より、ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン科目は、文系教養科目(選択必修科目)として、以下の通り3クラス開講いたします。
- 1Q水曜34限(400番台)文系エッセンス57(英語開講):Diversity, Equity, and Inclusion (DEI)
- 2Q水曜34限(400番台)文系エッセンス57(日本語開講):ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI)
- 3Q月曜56限(100番台)教養特論:ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI)
400番台科目は、大学院生用の科目です。英語開講・日本語開講となっておりますが、英語・日本語の習熟度はあまり気にせず、どなたでも関心のある方を歓迎とのことです。
さらに、文系教養科目「教養特論:障害学」において、DE&I部門では、ろう者による講義支援をおこなっており、手話通訳者2名の配置に係る経費支援を行いました。
Q3.授業を設置するに至った背景を教えてください。
A3.以前からDE&Iに関してきちんと学んでコンセンサスを取ることに注力するべきだという話は挙がっていました。教職員向けにはアンコンシャスバイアス研修がありますが、学生に対してはそういったものがないため、方法を検討していました。学生向けにはリベラルアーツで授業に組み込んでいくことが望ましいという方向性で進み、2025年度から具体化できる運びとなりました。今後、形態が変わる可能性もありますが、できる範囲でまずは立志プロジェクトや100番台科目から少しずつ導入していくことになりました。
以上を踏まえて、DE&Iに関する授業の必修化について次のように提言します。
- 2025 年度から立志プロジェクトの 1 テーマとしてとして扱うこととなった DE&I について、以降も継続的に扱う
- 200 番台、300 番台の選択科目での設置を目指す
キャンパスミーティングを通じて、DE&Iに関する授業や議論の場を確保しようとする取り組みが進んでいることがわかりました。大学統合に伴い、より多様な学生との交流機会が増えていきます。その中で各学生がDE&Iについて考え、議論する機会を継続的に確保することに大きな意義があると考えます。できるだけ多くの学生にこうした機会が提供されることを要望します。
脚注
- 旧・東京工業大学「東京工業大学が総合型・学校推薦型選抜で143人の『女子枠』を導入」:https://www.titech.ac.jp/news/2022/065237(最終閲覧日:2025年2月15日) ↩︎
- 旧・東京工業大学統計データ2023年のデータ「国または地域別留学生数」:https://www.titech.ac.jp/public-relations/pdf/facts-4-international-2023-02.pdf(最終閲覧日:2025年2月15日) ↩︎
- TOKYO TECH OPEN COURSE WARE「2024年度教養特論:ジェンダー・セクシュアリティと文化批評」:https://www.ocw.titech.ac.jp/index.php?module=General&action=T0300&GakubuCD=7&KamokuCD=110100&KougiCD=202433517&Nendo=2024&vid=03(最終閲覧日:2025年2月15日) ↩︎
- TOKYO TECH OPEN COURSE WARE「2024年度教養特論:障害学」:https://www.ocw.titech.ac.jp/index.php?module=General&action=T0300&GakubuCD=7&KamokuCD=110100&KougiCD=202430933&Nendo=2024&vid=03(最終閲覧日:2025年2月15日) ↩︎
- 大阪大学ダイバーシティ&インクルージョンセンター「授業ダイバーシティ&インクルージョンの世界」:https://www.di.osaka-u.ac.jp/diversity-and-inclusion/(最終閲覧日:2025年2月15日) ↩︎
- 芝浦工業大学ニュース・プレスリリース「芝浦工業大学では全学共通科目としてダイバーシティ科目を取り入れています」:https://www.shibaura-it.ac.jp/headline/detail/nid00001907.html(最終閲覧日:2025年2月15日) ↩︎