奨学金支援に関して、以下の意見や要望が寄せられました。
- 奨学金の内容充実(同様意見10件)
- 仕組みや手続き、選考基準の周知が不十分(同様意見9件)
- 経済状況による制限がない奨学金の設置(同様意見6件)
- 博士後期課程向け奨学金の充実(同様意見6件)
- 地方出身学生に対する支援の強化(同様意見5件)
奨学金は、学生が経済的に安定した生活を送り、学業や研究に専念するために必要な支援です。奨学金には、本学が独自に企画しているもの、国や地方公共団体、日本学生支援機構などの公的機関が企画しているもの、民間の奨学団体が企画しているものの3つがあります。今回の調査においては、奨学金についてさまざまな学生の意見が寄せられましたが、本学の施策だけでは解決できないと考えられる意見も多くみられました。そこで、本意見まとめは、本学学生の経済的状況に関わる現状やそれに対する意見を、本学学生の経済的支援の関係者に広く知っていただくことを目的としています。
1.奨学金の内容充実
現在の奨学金の支給額が物価上昇に対して十分ではないという意見が寄せられました。特に生活費や研究費の増加に対応するため、奨学金の金額を見直すことが求められています。また、返済不要の給付型奨学金の増設を望む声や間接的な支援として学費を下げることを求める声もありました。成績優秀者などに対して積極的に支援を行うべきだとする意見もみられました。
加えて、留学生からは奨学金の選択肢が限られている点が指摘されました。私費留学生への支援を拡充し、より多くの学生が奨学金を受けられるような制度が求められています。
2.仕組みや手続きの周知が不十分
奨学金の申請手続きや選考基準についての情報が十分に伝わっていないという意見が寄せられました。特に新入生や留学生は、どの奨学金が利用可能か分からず、申請の機会を逃してしまうケースがあるため、より分かりやすく情報を提供することが求められています。また、新入生用の奨学金は、入学後の早い期間で奨学金の申請が締め切られてしまう場合も多いです。新入生オリエンテーションやSlackなどを通じて申請についての告知を行うことが必要です。
さらに、本来奨学金を受けるべき学生は、学業と生活費を工面するためのアルバイトで忙しいため、わかりやすく情報が提示されなければ、奨学金に関する情報に触れる機会がないという意見もみられました。本当に支援が必要な学生に対して情報が届くような情報提供のあり方が求められています。
3.経済状況による制限がない奨学金の設置
現在、多くの奨学金は親の年収などの経済状況を基準に支給されます。しかし、学生の中には家庭内の関係性や教育方針などのさまざまな事情から親からの支援を受けられない場合があります。そのため、家庭の経済状況に依存しない奨学金制度の設置を求める意見が寄せられました。
いくつかの民間奨学金には、所得制限がないものもありますが、多くの奨学金には、家庭の経済状況による募集の制限があります。所得制限のない奨学金の創設に加え、奨学金の検索機能を強化し、学生の状況にあった奨学金を見つけやすくする工夫も必要であると考えます。
4.博士後期課程向け奨学金の充実
博士後期課程の学生に対する奨学金が不足しており、研究に専念できる環境が整っていないという声が寄せられました。特に、Tokyo Tech SPRINGプログラム(現Science Tokyo SPRINGプログラム)や日本学術振興会の特別研究員制度のような支援制度の充実を求める意見が寄せられています。特に支援対象となる人数を増やすことに対する意見が多くみられました。近年、本学理工学系独自の奨学金であるつばめ博士学生奨学金をはじめ、博士後期課程の学生に対する経済的支援は充実してきているように見えます。しかしながら、未だ必ずしも研究に専念できる環境がすべての博士後期課程の学生に対して用意できているわけではないようです。博士後期課程の学生は、本学および、日本が世界に対してリードした研究を行うために重要な存在であり、適切な待遇の改善が必要であると考えます。
5.地方出身学生に対する支援の強化
地方出身の学生は、都市部での生活費が高く、経済的負担が大きいという意見が寄せられました。地方出身者向けの支援制度を拡充し、帰省等の交通費や家賃補助などを検討することが求められています。現在、本学理工学系には入学前予約型の地方出身者向け奨学金が存在しますが、公募数は5名であり十分とは言えません。本学が推し進めるDE&Iの理念に照らせば、地方向けの学生に対する支援を拡充させることで、出身の背景が多様な学生を支援することが妥当です。
奨学金などの学生の経済支援は、大学のほか、国などの公的機関や、民間奨学団体など、幅広い期間が連携して取り組むべき課題です。これらの学生の意見を踏まえ、本学として実態調査や、制度策定、他の機関への働きかけなどの何らかのアクションが取られることを願います。