本学の教育システムについての学生の意見として次のようなものがあります。

1. Slack関連(計15件)

2. OCW・シラバス関連(計17件)

3.教務Web関連(計4件)

本学には、T2SCHOLA、教務Webシステム、Slack、Boxなど様々なITシステムが存在します。近年のSlackやBoxの導入、大学統合による影響で、学生が扱う学内ITシステムは一時的ではあるかもしれませんが、増えています。今回は、本学が用いる学内ITシステムの将来の方向性を踏まえ、これからのシステム構築・運用の改善の一助となるために学生の主要な意見を取り上げます。特に、学生が接する機会が多いSlack、OCW(シラバス)、教務Webシステムについて取り上げます。

1.Slack

Slackは、本学で用いている情報コミュニケーションツールの一つであり、日々授業や学生が所属するコミュニティの情報、イベント情報、大学からの情報など様々な情報が発信されています。Slackでは、テーマごとにチャンネルが分けられており、その中でチャットベースのコミュニケーションを取ることができます。このため、気軽に投稿や返信ができる点が魅力です。しかし、その気軽さが故に、日々1人で処理しきれないほどの情報が流れてきます。また、チャンネルも細分化されており、探したい情報が掲載されている場所を突き止めることや、今持っている情報をどこに投稿するべきかを検討することに多くの時間を要します。

2024年11月13日に、このようなSlackの使用感について有志の学生から意見が挙がりました[1]。この中で、全学Slackのデメリットとして、チャンネルや通知が多く、情報を見逃してしまうこと、情報の階層が分かりにくいこと、求めている情報へのアクセスが難しいことの3点が挙げられました。この投稿には、70件以上のリアクションと18件の返信があり、本学情報企画課はこれらの意見を基に情報通知における環境整備を行いました。

情報通知における環境の改善はなされたとはいえ、学生にとっては未だ流れてくる情報が多いのが実情です。より整理された使いやすいSlackとなるために、生成AIなどを利用した情報の個別最適化を行うことが必要であると考えます。また、先に挙げた事例のように学生にとって使いやすいシステムを学生自身が発案し実装まで行うために、学内情報システムに関するRAを雇用することで、学生にとっての利便性が高いシステムを比較的低いコストで開発することが可能ではないかと考えます。

2.OCW(シラバス)

OCWは、本学の講義に関する情報(シラバス)が掲載されているシステムであり、学生が履修科目を決める際に重要な情報源となっています。OCWのWebサイト自体と、そこに掲載されているシラバスについては以前から学生から不満の声が上がっており、学勢調査2020ではOCWの利便性向上のためにサイトの読み込み速度を向上させる提言を[2]、学勢調査2022では、シラバスの内容充実のための提言を行いました[3]。しかし、現在においても、OCWの動作が遅いという意見や、シラバスに正しい情報が掲載されていないという意見が学生から挙がっています。

以前から提言に挙げているような、OCWのサイト自体とその中身に対しての適切な処置がなされなければ、学生にとって利用しにくいシラバスのままとなってしまいます。OCWのサイトについては、学勢調査2020で提言しているように、トップページの改善を行うことと、検索機能の改善を行うことが重要であると考えます。中身のシラバスについても、教員への周知を徹底するほか、オリエンテーション動画を掲載するなど、学生にとってその講義がどのようなものであるかを分かりやすく示すための工夫を行う必要があると考えます。

3.教務Webシステム

学生は、本学理工学系の教務に関する情報を教務Webシステムから閲覧することができます。特に講義が行われる講義室の情報が明記されていて、簡単に確認できるシステムであるということもあり、多くの学生はクォーターの変わり目の時期などで講義室を確認する手段として教務Webシステムを頻繁に利用します。しかし、教務Webシステムは、毎週火曜日・金曜日の4:00-8:50にメンテナンスが行われています。1時限目の開始時刻は8:50であるため、毎週火曜日と金曜日に学生は講義室を確認することができず、不便に感じる場合が多いです。

教務Webシステムのメンテナンス終了時刻は、学勢調査2020にて提言が行われ、元々9:00終了であったものが、2021年4月から8:50に変更になった背景があります[4]。そして、「現状の体制では、現在の開放時間(8:50)をさらに繰り上げることは不可能」という大学側の回答がありました[5]

学生の教務Webシステムの利用用途は、基本的に講義関連の情報の取得であり、限定的な用途であると考えます。このために現在のシステム管理体制を変更することは、合理的であるとは言えません。そこで、メンテナンスが早朝に行われていない、T2SCHOLAに教務Webシステムに掲載されている情報を掲載するということで、現状の学生側の課題を解決できると考えます。具体的には、利用講義室、講義開始時刻の2つの情報をT2SCHOLAの時間割表及び講義ページ内に記載することです。

以上の内容を踏まえ、情報企画課とキャンパスミーティングを行いました。

Q1.による情報提供によっておこる情報過多改善のための現状施策を教えてください。

A1.特に利用開始初期においてはチャンネル増加に追い付かず、チャンネルが探せなくなる・どのチャンネルに自分に関係するメッセージがあるか分からなくなる、ということが発生します。このため基本操作説明会やナレッジ共有チャンネルを通じて、「サイドバーのカスタマイズ」「後で」「アクティビティ」等の情報整理機能の使い方を重点的に案内しています。なお、説明会はレコーディングを公開しているので、出席できなかった方もご覧いただけます。

全学一斉通知を追うのが大変、というご意見も頂戴しています(Slack上で学生有志による改善検討スレッドも立ち、大変参考にさせて頂きました)。これを受け、昨年12月に、一斉通知チャンネルのレイアウト変更(自分にどのくらい関わりがあるかを判別しやすい情報を追加する)、一斉通知を一覧化したリストの提供を開始しています。

人により必要な情報は様々ですが、学内メンバーが欲しい情報を探しやすくする・届きやすくする、という両面から、引き続き改善施策を検討していきたいと思います。

Q2.情報提供の個人最適化にあたっての課題点を教えてください。

A2.情報提供する機会の多い部署間の連携により実現できる改善もあると思うので、この点は職員間でコミュニケーションをしていきたいと思います。
AIなどの自動化技術を導入する場合は、技術としてまだ発展途上にあるということもあるかと思います。また上記に関連しますが、コストは重要な要素です。

以上を踏まえ、以下の3点を提言します。

  1. Slack について、学生の意見を取り入れた開発を行うために学内情報システムに関する RA を雇用すること
  2. OCW について、トップページの改善と検索機能の改善を行うこと。また、オリエンテーション動画などによってシラ バス内容を学生にとってわかりやすいものにすること
  3. T2SCHOLA について、講義の教室情報と講義開始時刻を掲載すること

今回提言にはしなかったものの、情報システムについて学生から意見が挙がっていた点について各種システムごとに以下にまとめています。なお、以下の意見は本調査を行った2024年6月~7月時点でのシステムに対するものです。本提言書を大学へ提出する2025年3月時点では、大学統合の影響によりExticの導入などITシステムに変更があったため、必ずしも2025年3月現在の各種システムに対して学生が同様の意見を持っているとは限らないことに注意してください。

Slack関連

Box関連

T2SCHOLA関連

メールシステム関連

Tokyo Tech Portal関連

教務Webシステム関連

図書館関連

システム全般

肯定的な意見

脚注

  1. 本学Slackの当該投稿:https://all-science-tokyo.slack.com/archives/C07CDCSPW4F/p1731501662621329 ↩︎
  2. 学勢調査2020提言書:http://www.siengp.titech.ac.jp/gakuseichousa/2020/2020_gakusei_teigensyo.pdf(最終閲覧日:2025年2月28日) ↩︎
  3. 学勢調査2022提言書:http://www.siengp.titech.ac.jp/gakuseichousa/2022/2022_gakusei_teigensho.pdf(最終閲覧日:2025年2月28日) ↩︎
  4. 学勢調査2020提言書:http://www.siengp.titech.ac.jp/gakuseichousa/2020/2020_gakusei_teigensyo.pdf(最終閲覧日:2025年2月28日) ↩︎
  5. 学勢調査2020大学の対応:http://www.siengp.titech.ac.jp/gakuseichousa/2020/2020_gakusei_follow.pdf(最終閲覧日:2025年2月28日) ↩︎