設問No. 6-9「学内の施設に関しての意見があれば教えてください。」に次のような意見がありました。

大岡山キャンパス内にある体育館アリーナには、空調設備がありません。そのため、特に夏場はアリーナ内の気温が高くなり、館内で活動を行う上で熱中症による体調不良者が出ることが懸念されています。学勢調査2022では、「体育館アリーナにおける冷房の設置」として、スポットエアコンの導入を提言しました。しかし、2025年現在、エアコンは設置されていません。

環境省では2020年に試行を行なったのち、2021年から熱中症警戒アラート[1]を発表しています。この熱中症警戒アラートは、「熱中症の危険性に対する『気づき』を促すものとして、府県予報区等内において、いずれかの暑さ指数情報提供地点における、翌日・当日の日最高暑さ指数(WBGT[2])が33(予測値)に達する場合に発表」されます。発表開始以降、熱中症警戒アラートが発表される日は毎年増え続けています(図3-3.1)。2024年の東京都での熱中症警戒アラート発表日数は37日で、前回調査を行った2022年の10日と比べると3.7倍となっており、熱中症の危険性はますます高まってきています。実際に、学勢調査2024でも「体育館で大会を行った際に熱中症で倒れる人が出ている」という声も含め、夏の体育館の環境がただ暑いだけではなく、危険な状態であるという声が多く寄せられています。

コメント
図3-3.1東京都における月別熱中症警戒アラートの発表日数の推移[3]

学勢調査2022の提言「体育館アリーナにおける冷房の設置」に対して、大学から「設置予算の確保を目指す。」という回答をいただきました[4]。これらの現状を踏まえて、学生支援課とのキャンパスミーティングを実施し、以下の回答をいただきました。

Q1.学勢調査2022で、体育館アリーナへのエアコン設置を提言させていただきました。大学の対応では設置予算の確保を目指すとお答えいただきましたが、その後、エアコン設置は進んでいますか。

A1.年度、2024年度と施設運営部へ予算申請しておりますが、現在措置されておりません。2025年度も引き続き予算要求しておりますが、まずは先行して2025年夏までに送風機を導入する予定です。送風機とエアコンでは予算の規模が異なり、体育館アリーナが古い構造で冷却効率の高いエアコン導入には費用対効果の面でハードルが高いという課題もあります。

現在、体育館アリーナで可能な暑さ対策は、扇風機と下側にある窓の開閉です。このため、送風機は改善につながる可能性があります。しかし、先述したようにここ数年、暑さが一層深刻化し、熱中症の危険性が高まっていることから、根本的な暑さ対策には空調設備の導入が求められます。

体育館に導入可能な空調設備として、エアハンドリングユニット、パッケージエアコン、スポットエアコンの3種類があります。それぞれの特徴は表3-3.1の通りです。

表3-3.1 空調設備の特徴
エアハンドリングユニット パッケージエアコン スポットエアコン
概要 大空間向けオーダーメイドの空調設備 既製品の業務用エアコン 局所冷房に特化した空調設備
長所 気温を調整するエアコンの機能に加え、湿度の調整や換気機能があり、最適な空調が実現可能 広い空間の気温調整に適している コストを抑えて導入可能
短所 設置には工事が必要なため、非常に高額 本学アリーナに設置するには工事が必要 空間全体の冷却には不向き

体育館アリーナの構造が古いため、設置に工事を要するエアハンドリングユニットやパッケージエアコンの導入は、費用対効果の面で優れないと考えられます。一方、スポットエアコンは局所冷房に特化しており、体育館のような広い空間全体を冷却するには適していません。しかし、人がいる場所に冷風を送ることで、熱中症の予防効果が期待されます。また、工事が不要なため、コストを抑えて導入できる点もメリットです。

これらの空調設備は消費電力が大きく、設置後もコストがかかる欠点があります。電力を使用しない暑熱対策として、太陽から伝わる日射による輻射熱の影響を軽減する遮熱シートの使用があります。遮熱シートを体育館の天井に設置することで、館内の温度上昇を抑える効果が期待されますし、さらにエアコンと併用することで消費電力を下げる効果も期待されます[5]

他に、暑さ対策の一つとして、窓を開けることも考えられますが、アリーナ上部の窓につながるスペースは学生が立ち入り禁止となっているため、学生はアリーナ下側にある窓しか開けることができません。根本的な暑さ対策にはエアコンが必要だと考えられますが、送風機導入と窓の開閉を組み合わせて風通しをよくすることで多少は暑さを軽減することが可能ではないかと考えられます。

以上を踏まえて、体育館アリーナの設備について次のように提言します。

  1. 体育館アリーナへのスポットエアコンの導入
  2. 学勢調査2022で提言した、体育館アリーナへのスポットエアコンの導入を再提言します。スポットエアコンであれば、工事が不要で、費用を抑えながら暑さ対策の効果が期待できます。

  3. 送風機導入に加え、アリーナ上部にある窓も学生が開閉できるようにすること
  4. 遮熱シートの導入

根本的な熱中症対策として空調設備の導入が求められます。空調設備導入までの暫定措置として、アリーナ上部にある窓の開閉許可と遮熱シートの導入を提言します。

設問No. 6-9「学内の施設に関しての意見があれば教えてください。」では、トレーニングルームについての意見も寄せられました。

学勢調査2018では、「トレーニングルームの時間外利用」を提言しています。その際、大学からは「予算削減によりトレーニング機器の更新が困難な状況であり、大学としては時間外営業よりも機器の老朽化対策を優先すべき課題と考えています。そのため、時間外営業は今後の検討課題とします。」との回答をいただきました[6]。学勢調査2024での学生からの意見を踏まえ、学勢調査2018以降のトレーニングルームについての検討状況を確認するため、学生支援課とのキャンパスミーティングを実施し、以下の回答をいただきました。

Q1.学勢調査2018の提言でトレーニングルームの時間外利用を提言させていただきました。大学の対応では、機器の更新を優先して行うとの回答をいただきましたが、その後時間外利用の検討は進んでいますか。

A1.時間外利用については、現状検討しておりません。管理しているリベラルアーツ研究教育院と引き続き検討していきます。

Q2.トレーニング機器の更新は進みましたか。

A2.2、3種類の機器を更新しました。費用も考慮し、中古機器の導入も行いました。トレーニングセンターはリベラルアーツ研究教育院の管理ですが、要望があれば学生支援課の予算で購入します。すずかけ台のトレーニングルームでは、多くの要望があったことから、機器の大規模更新をしています。

Q3.大岡山トレーニングルームHPのトレーニングルームの利用者数を拝見したところ、朝〜昼時間帯の利用者が多い印象を受けました[7]。学勢調査2018のキャンパスミーティングで質問させていただいた際、利用人数が10人以下だと時間外利用は難しいとのご回答をいただきました。利用者数が比較的多いと予想される朝の1限(8:50〜)時刻からトレーニングルームを試験的に開放することは可能でしょうか。

A3.リベラルアーツ研究教育院との相談になります。管理コストがかかりますので、予算と合わせて検討が必要です。

以上の回答を踏まえ、トレーニング機器の更新が進みつつあることを確認できたため、学勢調査2024ではトレーニングルームに関する提言を見送りました。

脚注

  1. 環境省「熱中症警戒情報とは」:https://www.wbgt.env.go.jp/about_alert.php(最終閲覧日:2025年2月18日) ↩︎
  2. 暑さ指数であるWBGT(Wet Bulb Globe Temperature、湿球黒球温度)は、熱中症を予防することを目的として、世界中で広く活用されている指標です。熱中症の発症に関与するとされている、気温、湿度、日射、気流の4要素を総合的に評価することができるため、人が受ける暑熱環境による熱ストレスを評価し、熱中症を予防するための指標として活用が推進されています。 ↩︎
  3. 環境省「熱中症警戒アラート」の発表履歴2024年:https://www.wbgt.env.go.jp/alert_record.php, 2023年:https://www.wbgt.env.go.jp/alert_record_2023.php, 2022年:https://www.wbgt.env.go.jp/alert_record_2022.php, 2021年:https://www.wbgt.env.go.jp/alert_record_2021.php(最終閲覧日:2025年2月18日) ↩︎
  4. 学勢調査2022大学の対応:http://www.siengp.titech.ac.jp/gakuseichousa/2022/gakuseichosa2022_daigakunotaio.pdf(最終閲覧日:2025年2月18日) ↩︎
  5. 文化シャッターニュースリリース「気候変動への緩和に貢献する“遮熱事業”をBXグループとして本格展開」:https://www.bunka-s.co.jp/news_info/20241017news/(最終閲覧日: 2025年2月18日) ↩︎
  6. 学勢調査2018大学の対応:http://www.siengp.titech.ac.jp/gakuseichousa/2018/2018_gakusei_follow.pdf(最終閲覧日:2025年2月19日) ↩︎
  7. 東京科学大学(旧東工大)大岡山トレーニングルーム:https://tokyotechtoresen.wixsite.com/toresen(最終閲覧日: 2025年3月8日) ↩︎