設問No. 3-7「英語で開講される科目について意見があれば教えてください。」に以下の意見が寄せられました。

設問No. 3-4「教養科目(理工系教養科目、文系教養科目、英語科目、第二外国語科目、日本語・日本文化科目、広域教養科目、教職科目、キャリア科目(2023年度まで)、アントレプレナーシップ科目(2024年度以降))への意見があれば教えてください。」において、「英語科目」に関して以下の意見が寄せられました。

過去の学勢調査においても、英語開講科目に関する意見を聞く設問を設けており、「日本語開講の講義と比べて、英語開講では講義の理解度が低い」との声が挙がっていました[1]。例年同様の声が見られることから、英語開講科目の教育内容や英語学修の支援体制の改善は、引き続き重要な課題であると考えられます。

学勢調査2022において、提言2-11「英語開講科目に関する改善要求」[2]では、「学士課程の専門科目講義から資料に専門用語を載せるなど工夫を行い、大学院課程を見据えた対策を行っていく」という提言をしました。これに対し、本学から「大学院課程を見据えた学士課程における英語教育については、現在、教育本部内に専門のWGを設置し、検討しているところです」という回答をいただきました[3]。学修一貫のカリキュラムを構築している本学理工学系において、大学院課程を見据えた学士課程における英語教育は、専門的な知識と英語能力を段階的に高めていく上で重要な意味を持つと考えます。

現行の学士課程における英語科目のカリキュラムは、外国語としての英語の運用能力を高め、将来的な英語での学修や研究活動に対応するために必要な各種技能の習得を目的として体系的に構築されています。まず、必修科目として英語第一から英語第九までの9科目が設けられており、英語第一から第四は100番台、英語第五から第八は200番台に位置づけられ、指定されたクォーターにおいて全学生が履修することになっています。英語第三/第四および英語第五/第六、第七/第八の各ペアにおいては、読解・作文に重点を置く「RW」クラスと、聴解・口頭表現に重点を置く「LS」クラスに分かれ、それぞれのクラスを履修します。英語第三から英語第八までの「LS」クラスでは、大学入学後のTOEFL ITPのスコアを基に、「LS-ADV(上級)」「LS」クラスの2段階のクラス編成を行っています。英語第九は300番台に位置し、TOEFL ITPやTOEFL iBT、TOEIC Listening & Readingなどの試験で定められた基準を満たすことで単位が認定される仕組みとなっています。また、必修科目に加えて、100番台から300番台まで複数の選択科目が用意されており、補完的な学びの機会として履修することが推奨されています。

このような現行のカリキュラムに対して、改善を求める学生の声が寄せられました。具体的には、「実用的なカリキュラムにしてほしい」という意見が最も多く、将来的な英語での学修に即したカリキュラムを学生が求めていることがわかります。「高校の授業と同等もしくはレベルが低いと感じる」という意見も多く、現行の必修科目のクラス編成や講義内容に問題意識を持っている学生がいることがわかります。

これらの現状を踏まえ、教務課、リベラルアーツ研究教育院業務推進課、リベラルアーツ研究教育院とのキャンパスミーティングを実施し、以下のような回答をいただきました。

Q1.学勢調査2022の提言2-11において、「学士課程の専門科目講義から資料に専門用語の英語を載せるなど工夫を行い、大学院課程を見据えた対策を行っていく」という提言を行い、本学から「大学院課程を見据えた学士課程における英語教育については、現在、教育本部内に専門のWGを設置し、検討しているところです。」という回答をいただきました。現在、具体的にどのような検討がなされていますでしょうか。

A1.WGでは、専門科目を英語で実施する大学院授業科目を見据えた対策として、学士課程の高学年の段階で予備的な英語教育を導入することについて検討しています。導入にあたっては、英語に苦手意識のある学生、英語での専門科目の学修に積極的ではない学生に重点を置き、これらの学生の英語力を向上させるための施策を考えております。なお、施策の実施については、系ごとに英語開講科目等の事情が異なることから、全学一律に実施するのではなく、系ごとに適切な方法を検討の上、実施することとしております。

Q2.検討している中でどのような問題がありますでしょうか。

A2.系ごとに英語開講科目等の事情が異なるため、全学で一律に実施することが困難であることです。

Q3.どのような講義形式を考えていますでしょうか。

A3.系によって実施方法は異なりますが、英語による授業科目を実施する場合は、講義または演習による形式を想定しています。

Q4.学修一貫のカリキュラムを構築している本学理工学系において、英語が不得意な学士課程の学生を支援するための講義やサポート体制は整備されていますでしょうか。

A4.リベラルアーツ研究教育院(ILA)外国語セクションの英語科目では、まずは全ての学生が必修科目の履修を通じて一定以上の英語力をつけることを目指しています。1〜2年生の必修科目(英語第一〜第八)については、通常クラスに加えて前期・後期に再履修クラスを開講しており、英語が不得意な学生もスムーズに履修が進められるよう配慮しています。3年次必修科目にはTOEFL等のスコアで判定される英語第九がありますが、こちらを推奨学期に習得できなかった場合には、第九再履修クラスを履修することで継続的に学修を続けられるようにしています。

選択科目では100番台からTOEFL対応の科目、スピーキング系の科目等が各種開講されており、学生は各自の習熟度に合わせて英語開講の授業に向けた準備を進めることができます。また、夏と春には英語母語話者の教員による集中講義も開講され、主に留学(英語で学ぶこと)を考えている学生を対象にした授業を提供しています。

学修方法について相談したい場合には「外国語学修相談室」で相談に対応しており、また具体的な英語学修の質問や、英語で話す機会を持ちたい学生には、「English Open Office Hours」や「English Café」で母語話者教員が対応しています。英語のレポートや論文の書き方に困った場合には「東京科学大学ライティングセンター」が学生をサポートします。

これらの制度についてはILA外国語セクションのHP[4]に紹介があり、面談等の予約方法もそちらで調べることができます。学生の積極的な利用を期待しています。2028年度以降に向けてカリキュラムの大幅な改定が予定されていますが、様々な習熟度の学生にきめ細かく対応するために、リメディアル(補修教育)の選択科目の開設や新たなレベル別クラスの設定なども検討されています。

キャンパスミーティングを通じて、学士課程の高学年から系ごとに予備的な英語教育を導入する検討が進められていることがわかりました。一方で、現状の英語学修に対する大学のサポート体制は、選択科目やイベントの提供など、学生の能動性に依存している部分が大きく、英語を苦手とする学生に対する十分な施策とは言えません。そのため、こうした取り組みだけでは英語能力の底上げにつながりにくいと考えられます。

以上を踏まえて、大学院での英語開講科目受講に向けた、学士課程での英語能力向上を目的としたカリキュラムの設置について次のように提言します。

一つ目の施策として、各系の必修科目、選択必修科目などの履修カリキュラムに組み込む方法が考えられます。英語に苦手意識を持つ学生が、自発的に英語教育を行う科目を選択して履修するのは容易ではないため、必修科目や選択必修科目に組み込むことで、これらの学生にも最低限必要な英語能力を確実に習得させる仕組みを整えることが求められます。

二つ目の施策として、英語の語学力を授業の評価対象に含めないという方法が考えられます。生命理工学院の100番台の「国際バイオ創造設計【生命理工学院】」[5]では、専門分野に関する最新の研究を英語でグループディスカッションし、英語でプレゼンテーションを行う授業が実施されています。この授業では、英語の語学力自体を評価対象とせず、ディスカッションの積極性やプレゼンテーション、創造性などを評価基準とすることで、英語に苦手意識を持つ学生でも積極的に履修できるよう工夫されています。このように、評価方法の工夫によって、英語が苦手な学生にも実践的な英語能力の習得の機会を提供し、より多くの学生が英語教育に取り組みやすい環境を実現することが可能となります。

必修科目は、全学生が一定の英語能力を身につける機会を与え、大学全体としての英語能力の底上げを図ることができます。しかし、こうした必修科目の利点が現状では十分に生かしきれていないと考えられます。学生の多様な学修ニーズや将来的な専門性の高い学修に対応することができるカリキュラムの検討が必要だと考えます。

一つ目のカリキュラムの改善として、キャンパスミーティングでも述べられている新たなレベル別クラスの設置が考えられます。具体的には、現状の2段階クラス編成を見直し、習熟度に応じたより細分化されたクラス分けを行うことが考えられます。現行の上級位置づけのクラスを設けるだけでなく、英語を苦手とする学生に対しても、適切なレベルで学修を進められる支援体制を整える必要があります。

二つ目の改善として、英語科目の必修科目における専用教科書を作成することが考えられます。現状では、各クラスの教員が指定した教科書を用いて授業を行っているため、授業の目標設定や評価基準が完全に統一されているとは言えない状況です。必修科目専用の教科書を作成することで、カリキュラム全体の一貫性が確保されるとともに、すべての学生が統一された学修目標に沿って着実に英語力を向上させる環境が整います。また、専用教科書の内容を本学理工学系の学生が習得すべき英語能力に即したものにすることで、より実践的な英語教育が実現できると考えられます。

脚注

  1. 学勢調査2018:http://www.siengp.titech.ac.jp/gakuseichousa/2018/2018_gakusei_teigensyo.pdf(最終閲覧日: 2025年3月17日) ↩︎
  2. 学勢調査2022:http://www.siengp.titech.ac.jp/gakuseichousa/2022/2022_gakusei_teigensho.pdf(最終閲覧日: 2025年3月17日) ↩︎
  3. 学勢調査2022大学の対応:http://www.siengp.titech.ac.jp/gakuseichousa/2022/gakuseichosa2022_daigakunotaio.pdf(最終閲覧日: 2025年3月1日) ↩︎
  4. 東京科学大学リベラルアーツ研究教育院外国語セクションHP:https://www.fl.ila.titech.ac.jp/index.html(最終閲覧日:2025年3月9日) ↩︎
  5. TOKYO TECH OPEN COURSE WARE「2024年度 国際バイオ創造設計【生命理工学院】」:https://www.ocw.titech.ac.jp/index.php?module=General&action=T0300&GakubuCD=10&KamokuCD=120900&KougiCD=202424065&Nendo=2024&vid=03(最終閲覧日:2025年3月17日) ↩︎